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一度「ゼロ」になった街は、支え合いのなか甦る 冬の南相馬・小高で感じた熱いくらいの「温かさ」 

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2022.02.10 12:00
提供元:南相馬市

明かりをつけていれば、誰かが見つけてくれる

小林さんは小高でチャレンジしている人、頑張っている人のことも教えてくれた。

そのうちの1人が、「小高とうがらしプロジェクト」代表の廣畑裕子(ひろはた・ゆうこ)さんだ。

名前の通り、小高でトウガラシを栽培するプロジェクトで、ここで生産されたトウガラシを使った商品は、双葉屋旅館から徒歩数分の場所にある「小高工房」で販売されている。

小高工房の看板と代表の廣畑裕子さん
小高工房の看板と代表の廣畑裕子さん

廣畑さんは震災後、しばらく避難所で生活をつづけていた。しかし、彼女の心はいつも小高にあった。

そして立ち入りが可能になると小高を訪れるのだが、知り合いや友達がいない。人がいない状態の小高は「とても寂しかった」。そこで2015年、彼女はまず、コミュニティースペースを作る。

「明かりをつけていれば誰かが見つけてくれるのではないか。そんな希望を持って人が来るのを待っていました」(廣畑さん=以下同)

そして、このスペースを作ったことが、トウガラシ栽培のきっかけをもたらした。

開所から5か月が経った2015年12月に発生した地震で、小高にも揺れが走る。その時も廣畑さんは、コミュニティースペースの明かりを灯したままにしていた。すると、地震の怖さから、軒下に70代くらいの人が4人、集まってきたのだという。

「このときになってようやく『小高に人のいる風景』が作れたと思ったんです。これ以降、ちょっとずつコミュニティースペースの存在が広まっていきました」
インタビュー中の廣畑さん
インタビュー中の廣畑さん

そんな風にして人が集まるようになったある日、廣畑さんはこんな話を聞くことになる。

「コミュニティースペースで会った人の中に農業に従事している人がいて、獣害に悩んでいると言うのです。
小高は避難指示区域になっていたため、5年ほど人間が住んでいませんでした。そうなると、もう人間の世界から動物の世界に変わってしまっていたんです。私も避難指示区域解除後に小高で20匹のサルの群れと遭遇したことがありましたが、5年もいなかった人がやってきたわけですから、部外者はサルよりも人間のほうなんですよね。
ただ、人間にも生活がありますから獣害とも向き合わなければなりません。そんなとき、農家の方から農作物を軒並みやられたけど、唐辛子だけは何ともなかった、と教えてもらったんです」

もしかして、動物たちはトウガラシが嫌いなのでは――?そう思った廣畑さんは2017年から試験栽培を始めた。彼女と2人の仲間、たった3人でのスタートだった。

トウガラシが広げたコミュニティ
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