五感の全部が刺激される! 海、温泉、絶品グルメ...湯梨浜町に行ってみたら、魅力に溢れすぎてた件
30代もなかばに差し掛かると、新たな刺激を受けることが少なくなってきた。
テレワーク続きで、外に出る機会も激減。たるんだ身体を立て直す「きっかけ」をつかめないまま、ダラダラと日常は過ぎていく。
どうにかして感覚を研ぎ澄ませられないものか――と悩む記者のもとに、鳥取県湯梨浜(ゆりはま)町に来てみないか、と誘いがあった。そこに行けば、東京ではできない体験ができるという。
この機会を逃すと、もうずっとこのままかもしれない。そんな思いからか、気付けば記者は湯梨浜町への道のりを一歩踏み出していた。
汗をかくだけ、「夏の思い出」は深まる
湯梨浜は2004年、泊村・東郷町・羽合(はわい)町の合併で生まれた町だ。名前通り「湯(温泉)」「梨」「海浜」を、産業や観光資源の中心としている。
おとなり倉吉市にあるJR倉吉駅(山陰本線)に辿りつくと、湯梨浜町役場・みらい創造室の職員さんが待ってくれていた。そしてさっそく案内されたのが「潮風の丘とまり」だった。
見晴らし抜群のこの場所で体験できるのは、「グラウンド・ゴルフ」。今や全国に愛好者がいるが、このスポーツは湯梨浜町(旧泊村)で生まれた。
通常のゴルフと違って、ボールを入れる「ホールポスト」を置けば、場所を選ばず楽しめる。コースのアレンジも簡単だ。
誰でもすぐにできる、ルールのわかりやすさが特徴だが、運動不足の記者は空振りとOBの連続。フォームを教えてもらっても、結果は惨敗。しかし、親睦は深まり、楽しいぞ。これが接待ゴルフというものか......(んなわけない)。
翌朝には、石脇海岸へ。踏みしめると不思議な音がする「鳴り砂」の浜も有名だが、今日ここで挑戦するのは、日本でも最近人気のアクティビティ・SUP(サップ、スタンドアップパドルボード)だ。
サーフボードを海に浮かべ、手に持ったパドルで漕ぐことで水面を移動するというのだが......波の上に立つなんて、自分にもできるんだろうか?
半信半疑だったが、海岸近くのサーフショップ「CROWD SURF(クラウドサーフ)」横山仁志さんに教えてもらいつつ実際に海へ出てみると、波が穏やかなこともあり、思ったよりもスムーズに前に進めた。
取材は2022年8月中旬。そこそこ日差しはあったが、そのぶん、足を水面につけた時のヒンヤリ感が心地いい。
操作にも慣れてきたら、ボードに寝転んで、心地よい潮風を浴びながら、ゆらーりゆらり。そうそう、こういうのが「夏の思い出」だよ!
温泉あがりで、とろける岩ガキを...
存分に身体を動かした後には、「癒し」も大切だ。湯梨浜には、ふたつの温泉地がある。「はわい温泉」と「東郷温泉」だ。どちらも、「山陰八景」のひとつである東郷湖の岸や地底から湧き出している。
せっかくなので、はわい温泉の「ハワイゆ~たうん」と、東郷温泉の「ゆアシス東郷 龍鳳閣」の両方に足を運んだ。
水着着用のスパゾーンのある龍鳳閣では、小中学生にまじって、おっさんひとり、ウォータースライダーの列へ。楽しむのが仕事なんだ、と開き直る。34歳、真夏の大冒険。
そしてもちろん、大人の楽しみも。夜は、職員さんオススメの居酒屋を紹介してもらう。
魚介も地酒も、出るものすべてが美味しかったが、一番ショックを受けたのが、ブランド岩ガキ「夏輝(なつき)」である。記者はカキ好きながら、「海のミルク」と呼ばれることにはいままで疑問を持っていた。でも、口の中ではじける夏輝のクリーミーさを知って反省。カキは間違いなく「海のミルク」だ。
しかもどうやら、取材したお盆ごろが、一番の旬らしい。ナイスタイミングでした。
「食べ物がうまくて、マズいものがない」
地元出身で、まちづくりなどに参加するNPO法人「とまり」の理事長を務める手石幸洋さんも、地域の魅力を、こう語る。足が早い(鮮度が落ちやすい)魚も刺身として食べられるし、果物も梨だけでなく、スイカやイチゴなど、バリエーションが多いそうだ。
東京や名古屋に住んだこともある手石さんによると、都会と違って「自然と共生できる」点が、湯梨浜町のいいところ。わざわざ時間を作って、長距離移動しなくても、すぐにスキーや海水浴へ行けるのだ。
「雪はちゃんと降る、雨も降る。春は花咲く匂い、初夏は緑、秋は夕日――。
湯梨浜には春夏秋冬がちゃんとある。自然が好きな人がおられたら、ぜひ(移住に)手を挙げて頂けたらなと。
その代わり、自然の厳しさもある。不便さを許容できるのであれば、人生を謳歌できると思いますよ」(手石幸洋さん)
移住を考えたとき、まずやるべきことは...
食べ物が美味しい。自然もめいっぱい楽しめる。これは移住も選択のひとつだな......?
そう考える人向けに、湯梨浜町では「ゆりはま暮らしお試し住宅」を用意している。記者が今回宿泊した「もりた屋」は、民家を改装した10DKで、家族連れでも十分余裕があるだろう。実際に住まれていた住宅だけあって、親戚の家に泊めてもらっているような感覚だった。
このほか松崎駅前にも、コンパクトなお試し住宅「まつざき屋」がある。どちらも3日~1か月間利用可能で、料金は2泊3日だと6090円(光熱・水道費は別途1日300円)。食にレジャーに、と楽しみながら、移住体験する拠点としてよさそうだ。
では、実際に暮らしてみると湯梨浜はどんな場所なのか。他県からの移住者にも話を聞いた。
石脇海岸で美容室「Seran」を営む鳥飼弥生さんは、もともと生まれ育った大阪で美容師をしていたが、趣味のサーフィンをしに、鳥取県内へ通ううちに、興味を持ったという。
「よく石脇にも来ていました。海もきれいだし、町のおばちゃんとか、おじちゃんとかも、サーファーに対して優しいんです」
親が残る大阪へ比較的アクセスしやすい立地なのも、後押しとなった。湯梨浜町に移住し「地域おこし協力隊」として3年間、空き家の利活用などを担当。任期を終えたあと、大好きな海の見える場所に、美容室をオープンした。
しかし、Iターンなどでは、移住者が「浮いて」しまって、コミュニティに溶け込めないケースも珍しくない。
湯梨浜町との相性がよさそうなのはどんな人か聞くと、「あまり『田舎暮らし』を求めてない人」が良いのではとのこと。そこまで干渉されることもなく、程よい距離を保ちたい人には、向いている風土だという。
移住を考えている人へのアドバイスも聞いてみた。
「まずは現地の人と仲良くなること。そして、住みたいとなったら通うこと。
良さも不便さも、地域を知るきっかけにもなる。私は移住前も5年くらい、ずっと通っていたので、地域おこし協力隊になったときは『あの子か!』という感じ。すでに顔なじみになっていたおばちゃんが『まさか大阪から来てたとは!』って驚いてました」
湯梨浜町では、移住希望者に向けたセミナーやツアーなどを定期的に開催している。鳥飼さんも言うように、現地に出向いて、肌感覚をつかむのは大切だ。ちょっとでも興味があれば、一度足を運んでみてはどうだろうか。
もっと気軽に情報収集したい人は、Facebookページ「ゆりはまフェローズ」への「いいね!」から始めてもいい。いいね!すると、町の情報が届くほか、県外在住者のお試し住宅利用料が安くなるなどのメリットがある。
「とはいっても、早速行ってみるのは勇気がいる」と思う人には、2022年9月17日に開催される無料オンラインイベント『「ゆりはま探険団!」 ~人生の宝探しをしよう~ 【Part1】 宝を見つけた先輩の探険トーク』がオススメだ。
10時30分~12時まで、関西や関東からやってきた先輩移住者がzoomミーティングで「湯梨浜の魅力」を等身大で語る。
さて、今回の湯梨浜への旅を振り返ると、五感すべてで楽しめていた。ここしばらく経験してこなかった感覚だ。
心残りは、「湯」と「浜」は満喫したが、「梨」シーズンにはちょっと早かったこと。二十世紀梨はもちろん、「新甘泉(しんかんせん)」といった新品種も育てられている。絶対にまた来るぞ!
なお、湯梨浜町では、お試し住宅「もりた屋」「まつざき屋」の運営、都市部を対象としたセミナー・体験ツアーの開催、「ゆりはまフェローズ」のSNS発信などを通して、移住定住促進に取り組んでいる。企業版ふるさと納税でも寄付を受け付けているので、湯梨浜のチャレンジを応援したい企業は、ぜひこちらから。
<企画編集:Jタウンネット>