東京→佐賀「0泊弾丸ツアー」に挑戦! 日帰りでも本当に楽しめる?その結果は...
東京からの日帰りでどれだけ佐賀を満喫できるだろうか――
昨年、人生初の佐賀訪問を果たし、すっかり佐賀に愛着がわいたJタウンネット編集部のN記者。その様子は「極寒の有明海で『一人ガタリンピック』挑戦! 寒さに負けて即挫折→凍える記者を救ったのは...」との記事で紹介している。
だんだんと秋めくある日、そんなN記者のもとに人生2度目の佐賀訪問の話が舞い込んできた。日本最大規模の弥生時代の環壕集落跡がある「吉野ヶ里歴史公園」を取材し、周辺観光地を訪問してほしいという。
「やった!また佐賀に行ける」――そう思った記者だったが、うまい話にはウラがあるもの。なんと今回のスケジュールは、東京から佐賀への日帰り取材。つまり、超弾丸佐賀ツアーといった旅程なのだ。
いやいや、無茶だろ...。尻込みする記者であったが、また思い出の地・佐賀を訪れることができる魅力は大きいものだ。
導かれるがまま、N記者はひとり佐賀の地へと向かった――。
時間に追われる佐賀の旅がスタート
記者が都内の家を出たのは早朝5時。そこから羽田へ向かい、空路で佐賀へ。 空港に到着したのは9時20分だった。
久しぶりに佐賀の地に降り立ったN記者。思えば、前回訪れた時から実に様々なことがあったものだ...。懐かしい光景に思わず感傷に浸りたくなってしまいそうだが、今日はかなりのタイトスケジュールのため、先を急ごう。
佐賀空港の定期便の到着便を利用した場合、予約しておけば最初の24時間1台2000円(2人以上の利用だと1台1000円)でレンタカーを借りることができる。日帰りにはぴったりだ。
予約しておいたレンタカーを走らせ、向かったのは吉野ヶ里歴史公園。ここでは「弥生人の声が聞こえる」をテーマに吉野ヶ里遺跡の保存と当時の施設の復元や発掘物を展示。さらに「火おこし体験」や「勾玉づくり」などの体験プログラムを通じて、弥生時代のくらしを体感することもできる。
約700年間の長きに渡って続いた弥生時代だが、吉野ヶ里遺跡は長い弥生時代のすべての時期(前・中・後期)の遺構・遺物が発見された学術的価値の高い遺跡だ。
マスコットキャラクターの「ひみか」に迎えられるなか、ずんずんと進み、さっそく弥生時代のくらしを体験してみよう。
最初に行うのは生活に欠かすことのできない「火おこし体験」。ライターやガスバーナーなどは一切使わず、自然のものだけを使って火をおこすことができるか挑戦だ。
特殊な装置を上下に動かし、摩擦熱を利用して火種を作るスタイル。単純に早く動かせばいいのだろうと完全に高をくくっていたN記者はここで大いなる壁に直面することになる。
火が付きそうになったと思いきやすぐに消え、何度もトライするのだが一向に上手くいかない。時間もないなか、汗だくになるN記者。ちょっと寒いと思っていたのに一人だけ常夏だ。
続いて、体験したのは勾玉づくり。好きな石を選んで下絵を描き、それを元に砥石でひたすら形を整えていく。最後は紙やすりを使って磨き、自分だけの勾玉を作り上げていく。
方法はシンプルではあるが、延々と時間をかけてこだわりの勾玉を作りたくなってしまう。しかし、今日はとにかく時間がない。巻きで仕上げた勾玉がこちらだ。
せっかくここまで来たのなら、吉野ヶ里集落を復元した建物も見ねば。ちょうど居合わせた小学生たちと一緒に物見やぐらに登り、当時の様子に思いを馳せた。
はるか昔、ここに弥生人が生活していた――。壮大な歴史を目の当たりにして、言葉を失ってしまいそうだ。
吉野ヶ里のクニ全体の重要な事柄を決める会議や祖先の霊への祈りや祀りを行ったとされる主祭殿も復元され、園内にいると令和の時代から一気に弥生時代までタイムスリップしてしまったような不思議な感覚を覚えた。
12月の土日には、ここで夜の闇の中、キャンドルをメインに打ち上げ花火で演出するライトアップイベントがあるとのこと。次回はぜひそれも見てみたい。
腹ごしらえに「人妻」を食す
朝から猛烈なスピードで動き回っていたら異様に空腹を感じてきた。腹ごしらえのため向かったのは、1964年創業の「神埼やぐら寿司」(神埼市)だ。
「おすしとプリンのお店」ともうたうこちらのお店。お寿司はもとより、「佐賀の人妻プリン」という不穏なネーミングのスイーツも販売しているそうで、興味津々だ。まずはがっつりと食べて、デザートとして「人妻」を堪能しようではないか。
メニューでは「男のご褒美ランチ」と説明されているがっつりメニュー。空っぽの胃袋に染み渡り、涙が出てきそうなほど旨い。瞬く間に平らげてしまった。
そして、登場したのがこちらだ。
地元の上質な卵と佐賀産100%の生乳を使用したこちら。こぼれ落ちんばかりに頬張ると柔肌を思わせる豊満なプリンを満喫できる。滑らかな舌触りを楽しんでいると、なぜかちょっと悪いことをしているような気分になってきてしまう...。
いったい、なんでこんなネーミングなのだろうか。
3代目店長の佐藤大地さんによれば、当初佐藤さんのお母さんが茶わん蒸しの技法を使ったお菓子を作ることができないかと、試行錯誤してプリン作りを開始。これを店頭で「妻のプリンを食べてください」という名前で売り出していた。
だが、プリンを作っていたお母さんが重い病気に。入院・手術を経てなんとか体調は戻ったそうだが、それをきっかけにご主人(2代目)は、店で出していた「妻のプリン」を本格的に売れないかと考えるようになった。
佐賀県内に住む生産者の奥様方にも協力してもらって、現在の「人妻プリン」が誕生したという。
ネーミングだけだとアブナイ印象を抱いてしまうが、実はかなりの思いが込められている一品のようだ。
温泉、お土産、スイーツ...
さて、お腹もいっぱいになったところで、午前中の汗を流したい。次に向かうのは、「ひがしせふり温泉 山茶花の湯」(神埼郡吉野ヶ里町)だ。
かつて臨済宗の開祖・栄西禅師が中国の宋から「茶の種」を持ち帰り、付近の脊振山中腹の霊仙寺(りょうせんじ)内石上坊の庭にまいたのが日本茶の始まりだという。つまり、ここは日本茶栽培発祥の地なのだ。
そういった縁から、ひがしせふり温泉にはお茶のエキスたっぷりの栄西の湯「生茶風呂」もあって、体の芯から温まることができる。
脊振山脈を一望できる露天風呂も解放感マックスで最高だ。せわしない一日だが、お湯に浸かりながらぼおっと景色を眺めていると疲れもふっ飛んでしまう。
どんどん行こう。リフレッシュが済んだら、次はお土産だ。パン屋、カフェ、お食事処、直売所が一堂に会した産直市場「吉野麦米」(神埼郡吉野ヶ里町)に向かい、佐賀ならではの品をゲットしよう。
店内には「有明海のエイリアン」と言われるワラスボを使ったお土産も。佐賀といえば海苔が有名なため、今回は佐賀ならではの海苔ラーメンと海苔うどんをチョイスしよう。これでお土産も入手できた。
お土産を入手して安心したら小腹が空いてきた。カフェスペースで佐賀ではここでしか味わえないというロールアイスを注文し、可愛らしい見た目をしたスイーツを堪能しようではないか。
最後はやっぱりお酒
文化遺産にグルメ、温泉、お土産、スイーツ...。たった一日だが、なんだかすごい佐賀を満喫しているような気がする。だが、忘れてはならないものがある。そう、酒だ。
たっぷりと時間があるわけではないが、折角なので佐賀の美味しいお酒を堪能したい――。そんな思いを叶えるべく、向かったのがJR佐賀駅構内に19年6月よりオープンとなった佐賀ん酒体感空間「SAGA BAR」(佐賀市)だ。
佐賀のお酒やおつまみを立ち飲みスタイルで味わえるこちら。お酒の器には伊万里・有田焼や唐津焼などの伝統工芸品が使用され、佐賀の魅力がぎっしりと詰まった空間になっている。
純米大吟醸のセットが佐賀海苔のおつまみも付いてなんと1000円というリーズナブルな価格帯。ほかにも「3銘柄飲み比べセット」が500円(税込)とあり、これはついつい飲み過ぎてへべれけになってしまいそうだ。
九州随一の酒どころである佐賀。そんな佐賀のお酒を手頃な価格で楽しめて、最高に気分がよくなってしまう。スタッフで利き酒師の庄島瑞恵さんによれば、県外からも「SAGA BAR」を訪れるために佐賀に来たという人もいるとのことで、かなりの人気ぶりがうかがえる。
「SAGA BAR」をきっかけにして佐賀のことを知ってもらい、街へ繰り出してもらいたい――。お酒を飲みながらそんな熱い思いを聞き、ますます佐賀のことが好きになってしまった。
美酒を堪能し、このまま佐賀の夜を満喫したいのだが、帰らねばならない。お酒を飲むためレンタカーは駅周辺で返却済、帰りはバスだ。
後ろ髪を引かれる思いでバスに乗り込み、空港へと向かう。
着いた...。思わずそう声に出してしまうN記者。というか、やっぱり弾丸ツアーはもったいないよな...。無謀な企画にそんな感想を抱きつつ、まだ訪れたことがない佐賀のスポットに思いがよぎる。
「まだまだ佐賀には行きたいところがある」
そんな思いを握りしめ、家路へと着いたのであった。
ちなみに、今回の弾丸ツアーのスケジュールは以下のようなもの。実際にやってみる人はいないかもしれないが、佐賀観光の参考にしてもらいたい。
<企画編集:Jタウンネット>