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あなたの隣はどの師匠? 長崎の寄席がコロナ対策に導入した「芸人席」が粋だった

横田 絢

横田 絢

2020.07.01 06:00
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定番の掛け声も我慢

コロナ後初の落語会。前田さんは、もちろん「芸人席」以外にも対策を行った。

スタッフはフェイスシールドを着用し、非接触型の体温計で来場者を検温したり、エレベーターは4人ずつ乗るよう案内したりした。

これまでは受付で名簿をチェックしながら料金を受け取る形式だったが、今回は、ぴったりの金額を用意してくるよう予約客に事前に伝え、自分で料金箱に入れてもらうようにして、混雑や接触を減らした。

観客には入場前の消毒や公演中のマスクの着用を徹底させ、新宿にある老舗の寄席・末廣亭のガイドラインを参考に、観客には「ここで出すの笑い声と拍手だけ」と伝えたという。

「(前回中止になっているものだから、)今回はみんな、待って待って待っての(落語会)。気持ちとしては『待ってました!』と声をかけたくなるだろうけど、それはやめてね、と。心の中で叫んでね、と。声を出すことはよしてくださいとお願いしました」(前田さん)

また、前田さんの寄席では観客が落語に感動すると、客席から「もってこーい!」という声がかかるそう。「もってこい」とは、「長崎くんち」という秋の祭りで使われる掛け声で、アンコールを意味する。

長崎もってこい寄席では、落語が終わると緞帳が降りるが、「もってこーい!」の掛け声がかかると再び幕が開いて、落語家が挨拶をするのが、いつものスタイルだという。

「(観客には、)気持ちはわかるけど、今回だけは声を出すのは我慢してね、と。そして、拍手で皆さんの気持ちを表してくださいとは言いました。
今回(客を)半分しか入れなかったから、今までの2倍叩いていつもと同じくらいになるから、3倍4倍、手がちぎれるくらいの気持ちでね、お願いね、と」

定番のスタイルが変わってしまうのは寂しいのではないか、と尋ねると、それでもルールは守らなくてはならない、と前田さん。

これまでとは少し違う寄席だったが、待ちに待った生の落語に観客は満足したようで、「ドッカンドッカン受けましたよ」とのこと。

前田さん自身も、オンラインでの寄席は見ていたが、実際に劇場で楽しむ落語は格別だったらしく、楽しそうに笑いながら会を思い出していた。

「同じ時間と同じ空間、演者とお客さんが同じ空気の中で楽しむのがライブだと私は思ってますから。ネット配信は生に敵わない。久々の生は、よかったですね」(前田さん)

次回の長崎もってこい寄席は9月の予定。とはいえ、開催できるかどうかはまだ分からない、と前田さん。

新型コロナを乗り越え、気兼ねなく会を開催できる日が来るのを願わずにはいられない。

(Jタウンネット編集部 横田絢)

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