<東京暮らし(16)>「不登校」を考える

2019年11月 3日 13:00

不登校より深刻なものとは

西野さんは認定NPO法人フリースペースたまりば理事長でフリースペースえん代表。川崎市子ども夢パーク所長で、精神保健福祉士。早稲田大学、神奈川大学非常勤講師。文科省「フリースクール等に関する検討会議」委員なども務める。

33年間、不登校の子どもたちの居場所をつくり続ける西野博之さん
33年間、不登校の子どもたちの居場所をつくり続ける西野博之さん

1960年に浅草で生まれた西野さんは、86年から子どもや若者の居場所づくりに関わり、91年にフリースペースたまりばを開いた。2003年に子ども夢パーク内にフリースペースえんを開設、現在は指定管理者として夢パーク全体の運営管理を行っている。フリースペースえんには、19年3月現在、川崎市内外の151人の子ども・若者などが登録しており、利用料は無料だ。小中高生が中心だが、障がいやコミュニケーションに問題を抱え、就学や就労が難しい18歳以上の人もいる。

フリースペースえんでは、子どもや若者は思い思いのことをして過ごす。勉強をしたい子はもちろんできるし、教えてくれる大人もいる。楽器演奏やゲームをしたり、約1万平方メートルの夢パークの敷地の中を駆け回ったり、木登りしたり、時には薪割りやたき火、遊具を自分たちで手作りしたり。さまざまな年齢や個性の子ども、若者、大人が交ざり合った環境で、放課後夢パークに遊びに来た、学校に通う子どもたちとも交流する。

フリースペースえんが入る、川崎市子ども夢パークは森のように広い敷地だ
フリースペースえんが入る、川崎市子ども夢パークは森のように広い敷地だ

基本的に平日の10時半から18時まで開いているので、利用者はいつ来て、いつ帰ってもいい。ランチは毎日、希望する子どもたちとスタッフで手作りし、皆で一緒に食べる。筆者も1食分250円を支払い、この日のミートパイとサラダのランチのご相伴に預かった。本格的で美味しいメニューを、リラックスして皆とワイワイ食べる子どもたちは楽しそうだ。

そんなフリースペースえんで、西野さんやスタッフ、子どもたちから教わった話を紹介したい。

中島 33年という長きにわたり、不登校に関わってらっしゃいますね。

西野 不登校はいのちに関わる問題です。今まで出会った子どもたちの中で、救えなかったいのちが複数あります。自らいのちを絶つ子どもたちをなんとしても救いたい。これからもできる限り、不登校の問題に関わっていくつもりです。今や不登校の子どもが16万人ですが、実はそれより深刻なのは、ひきこもりの多さです。内閣府の調査では15~39歳までのひきこもりの人が54万人ですが、40~64歳はそれ以上の61万人。近年「8050問題(注・80代の親が50代のひきこもりの子どもの生活を支える、ひきこもりの長期化)」が注目されるようになりました。
今年は特にいろいろな事件の報道があり、ひきこもり=危険ではないかとか、不登校の延長線上にひきこもりがあるのではと、不登校児の親は恐怖を抱くわけです。そんな親は、自分の不安から「おまえ、このままだと人生終わっちゃうぞ」とますます子どもを追いつめがち。でも、33年間そんな子どもたちを見てきた僕は思います。きっと、大丈夫。なんとかなると信じる。その子の「今だ!」はきっとくる。だから今は、その子をありのまま受け止めてあげて欲しい。子どもを信じて、いのちに寄り添ってください。安心感に包まれて、心と体の休憩ができたら、子どもはいずれ自分で考え、また挑戦をし始めます。

夢パークには子どもたち手作りのウォータースライダーなどの遊具が
夢パークには子どもたち手作りのウォータースライダーなどの遊具が

夢パークには、「禁止」の看板がない。月・水・土・日曜は工具も使えるから、自分の責任で自由に使ってものを作ったり、遊んだり。ケガや失敗を重ねて乗り越える力を育むのが目的だ。社会環境の変化で、今の家庭には余裕がなくなった、と西野さんは言う。

親が「できないこと」を受け入れる余裕がない。これくらいできて当たり前、という態度で子どもに接すると、子どもは家の中で弱音が吐けず、ストレスのはけ口が学校で、より弱い子どもへのいじめ、暴力に向かいがちだと言う。

西野 学校に行かない理由は、実は子ども自身にもわからないことが多いんです。大人に聞かれたら何かしら答えるかもしれない。でも理由は一つではなくて、明確にはわからない、という子どもがほとんどだと思います。学校に行けない子は、「困った子」ではなくて、「困っている子」なんです。ここはそんな子たちにとって、「誰も排除しない。生きている、ただそれだけで祝福される場」でありたい。えんでは、アーティストや役者、ミュージシャン、外国人の英会話講師など、いろいろな人が来て、講座を行っています。例えば、元小学校教諭で、現在は地域の子どもたちに科学を楽しむ教室を「出前」している平林浩先生が来てくれた時。先生に、「『学力』って何ですかね?」と聞いてみると、「出会いをものにする力ですかね」という答えが返ってきました。AIが人間の知能を超える時代の教育とは、目標に向かってがんばる力・人とうまく関わる力・感情のコントロールができる力を育むことじゃないでしょうか。えんでは、希望した子たちは、通信制を含めて多くは高校へ進学しました。大学へ行って希望の職に就いた子も複数います。

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