福井の食通たちが選ぶ「究極のメニュー」がこちらです 越前がにからこだわりフレンチまで...超絶品を食べつくす!
福井食材が豪華なフレンチに変身
「福井で一番の食通」たちのおすすめメニューを食べ尽くす旅も、次の店でいよいよ最後。
笹井さんが繋げてくれた最後の食通は、インスタグラムで福井の魅力を発信する「村上姉妹」の姉・村上仁美さんだ。
数多くの福井の観光地や飲食店を紹介してきた彼女が紹介してくれたのは、フランス料理店「cadre (カードル)」のランチメニューだった。
2019年10月に開業したカードルは、食材はもちろん、食器からシェフが使用する刃物まで福井産。旧・朝日町(現在の越前町の一部)出身のオーナー・林真史さんの地元愛があふれる店なのだ。
村上さんおすすめのランチ「シェフのおまかせコース」も、福井の素材を生かしている。
お出迎えのスープとしてテーブルに運ばれたのは若狭湾の甘えびを使ったコンソメスープ。濃厚な磯の香りと深いエビの風味に魅せられる。正直、フレンチとは縁のない筆者は入店から緊張しきりだったが、このスープのおかげで肩肘の張りがかなり落ち着いた。
スープに続いて登場したのが指でつまんで食べる3品が乗ったアミューズ。それぞれ福井産の食材を使用している。
最初に食べたのが白米と黒米を焼いたおかきのようなものの上に甘えびが乗った1品(写真左)。甘えびの濃厚な旨味に気を取られてしまうが、お米の素朴で落ち着いた甘味も楽しめる。
福井産のカリフラワーが使われたタルト(中央)は、クリーミーで重厚感のある甘味で満足感抜群。福井の名産・つるし柿が使用されたフォアグラのマカロン(右)のクリームは塩味と甘味が絶妙に混ざり合っていて、香り高いほうじ茶を使った生地とのコンビネーションが実に優美だった。
アミューズの次に出てきたのは美浜町のブランドぶり「ひるが響」が使われた冷たいブリ大根。軽くあぶられたブリからあふれ出る旨味はクラクラするほど。紅くるり大根や紅芯大根といった色とりどりの大根やオリーブオイルやお酢などをベースにしたビネグレットソースのさっぱりとした風味が合わさることで、程よい余韻だけを残してくれるのが気持ち良い。
続いては、里芋の揚げ団子が運ばれてきた。里芋はもちろん福井産だ。団子の中には池田町で捕獲したイノシシのすね肉を煮込んだものを使い、ソースはあんかけ、上には白髪ねぎを乗せ、山椒とショウガの香りを加えて中華テイストに仕上げている。
パンチのある濃い味付けが魅力的で、とろみのある里芋とイノシシのすね肉の旨味が洪水のように溢れ出してくる。しかし、山椒とショウガのキレの良い香りで調和が取れ、後味がしつこくない。
いよいよ魚料理の順番がやってきた。越前河野のさわらを炭火焼で仕上げ、福井の白菜を使ったチップス、白菜の芯を使ったソースとチョリソーオイルを合わせた1品である。
メインであるさわらの旨味もさることながら、魚のおいしさを引き立てる白菜の活躍に驚かされてしまう。深みがあり、料理全体にボリュームを与えるような白菜のソースと香ばしいチップス。さわらの炭火焼が出てくるだけでも十分満足しただろうが、白菜の存在によって料理が無限の広がりを見せていた。白菜のパワーに感服するしかない。
メインディッシュは、永平寺町で作られる純米吟醸「黒龍」の酒粕で育ったブランド豚「黒龍吟醸豚」を使った1品だ。90分かけてゆっくり火を通した肉を、肉汁ベースのソースで味わう。
しっかりとした弾力がある黒龍吟醸豚からあふれる肉汁、さらにソースの旨味が一気に爆発し、たちまちおいしさの大花火大会が開幕する。何口食べても飽きることはなく、この幸福が永遠に続かないかと祈らずにはいられない。
付け合わせのペーストはトマトや赤パプリカ・ニンニクなどが使われた、ツンとした酸味を持っているもので、これがまた肉と相性が良い。肉の味のキレの良さを際立たせてくれる。この1品が出てきたら最後、「おいしい」という感情からもう逃げられない。