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<東京暮らし(12)>増える街角ピアノ

中島 早苗

中島 早苗

2019.07.07 13:00
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都庁のピアノは草間彌生さんが装飾を監修

「都庁おもいでピアノ」と名付けられたそのピアノは、名誉都民である草間彌生さんが装飾を監修。昨年6月から都の在住者に対して寄贈を募集し、ヤマハG3Aというグランドピアノを譲り受けて調律、装飾を施したという。

南展望室開室日の10:00~12:00、14:00~16:00の間なら、1回5分までという制約はあるが、誰でも自由に弾くことができる。予約はできない。10連休中などは混雑して長い行列ができたそうだが、空いていれば繰り返し並んで何度か弾くことも可能だ。

取材当日、午前中に展望室を訪れると、大勢の観光客で賑わう展望室に、グランドピアノの美しい音色が響いているではないか。なかなかの腕前を披露していたのは、神奈川県在住の山崎稜子さんという女性だった。弾き終わって立ち上がった山崎さんに話を聞くことができた。

来ると2時間は滞在して演奏を繰り返し楽しむという山崎さん/草間彌生監修都庁おもいでピアノ
来ると2時間は滞在して演奏を繰り返し楽しむという山崎さん/草間彌生監修都庁おもいでピアノ

小学生の頃から20年余りピアノを習っていた山崎さん。自宅にアップライトピアノはあるものの、最近は全く弾いていなかった。たまたま今年4月下旬、ツイッターで都庁おもいでピアノの存在を知り「弾きに行ってみようかな」と思ったという。それをきっかけにちょくちょく弾きに訪れるようになり、ここで同様にピアノを弾く人たちと知り合いにもなった。街角ピアノは他の街にもあるが、アップライトが多く、グランドピアノは珍しいのだそうだ。

この日はピアノ演奏希望者が比較的少なかったので、山崎さんは列に何度か並び直し、「幻想曲さくらさくら」(作曲・平井康三郎)、「パスピエ」(同・ドビュッシー)、「プレイアデス舞曲」(同・吉松隆)などを披露してくれた。1曲弾き終わると周囲で聞いていた人たちから拍手が起こる。

ここにピアノを置いたのは、とてもよいアイデアではないか。寄贈した人のお宅で使われなくなったピアノの、最も素敵な再利用の仕方だと、感心した。

草間彌生さんの装飾が施される前のこのグランドピアノは、どんな人に弾かれていたのだろうか。そして、弾きに来る人たち一人一人は、どんな思いで選んだ曲を弾いているのだろう。そんなことを考えながら、訪れる人たちが順番に弾く様子を眺めていると「都庁おもいでピアノ」というネーミングはぴったりのような気がした。

もう一人、演奏した人に話を聞くことができた。やはり神奈川在住の中尾恵里さんという女性だ。普段は厚木市で仕事をしているが、今日は新宿に出張に来たので、寄って弾いているのだという。

新宿に出張に来ると寄るという中尾さん
新宿に出張に来ると寄るという中尾さん

見事な腕前で弾きこなしていたのは、徳山美奈子作曲の現代曲「ムジカ・ナラ」。今日で4回目の訪問だそうだ。

「ここでの演奏は、自分が出場する実際のコンクールよりも聴衆が多いので、すごく緊張します。でも、だからこそ自分の調子や弱点を見つめ直すいい機会になります」と中山さん。前出の山崎さん同様、グランドピアノが弾ける場所は貴重だという。

この2人の女性の他にも、次々に弾く人が現れ、ピアノが既にこの場所で認知されていることがわかる。都民や近郊の市民、そして外国人観光客も含めた多くの人の憩いの場に、ピアノの生演奏が流れているというのは心和むものだと思いながら、眺めのいい展望室を後にした。

45階の南展望室からの眺め
45階の南展望室からの眺め

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