「格安古民家で、憧れの移住ライフ!」...の「意外と大きな出費」
2015年正月の連載企画「地方移住」。第1回で「田舎暮らしの生活費」、第2回で「就農と地域おこし協力隊」、第3回で「一般企業への就職や起業、フリーランス」についてそれぞれ解説した。
移住先と仕事が決まったら残るは「家」。一般人にとって人生最大の買い物だろう。購入するにしても借りるにしても、田舎物件は都会のマンションやアパートのように気軽に移り住むというわけにはいかない。
いい土地を見つけて「ここに理想の家を建てたい」と思っても、未造成地だと水道や排水、電気、ガスといったライフラインを整備しなければならず、初期費用は1000万円を超える。
かつて人の住んでいた中古物件なら最低限の問題はクリアしているものだ。潤沢な予算のある人以外は、中古物件を狙うのがいいだろう。
資金がないなら「公営住宅」がベター
誰も住んでいない家は湿気ですぐに傷み出す。住んでくれるのなら格安家賃でもありがたいというのが家主の本音だが、田舎の賃貸借契約はすぐに成立しない。狭いコミュニティの中で暮らしている田舎の人は、借主が信頼に足る人物かひどく気にするからだ。
予算のない人におすすめなのは自治体が運営する公営住宅だ。「定住者促進住宅」なら月の家賃が2~5万円程度で済み、リフォーム代もかからないのも魅力。集合住宅なら同じ移住者が身近にいる可能性が高く、しかも建物の構造上光熱費は割安になる。収入の少ない世帯は「市町村営住宅」という手もある。
最後に。田舎暮らしに憧れてはいるが地域の共同作業が無理という人に対し、山本さんは別荘地を勧める。
田舎で暮らすことは、基本的には地域社会に入っていくことを意味します。そこでは葬式の手伝いや用水路の清掃といった共同作業があり、移住者にも同じことが求められます。農村集落内の家を選ぶ人は、それが自分にできるかどうかを自問自答してください。とくに自治体の空き家バンクを利用する人は、それが最低条件と考えるべきです。
私には無理という人は、迷わず別荘分譲地の家を選んでください。こちらは民間の不動産業者から買うのが普通で、定住だけでなく別荘として利用することも可能です。
お正月特別企画として全4回でお送りした「地方移住」企画。取材から見えてきたのは、移住のためには十分な準備と計画、そして何より、当人の強いやる気が必要だということが見えてきた。2015年、編集部では引き続き、「地方の時代」の未来を探っていきたい。