本の上がギザギザ!→ワザとです 出版社の思いが詰まった「天アンカット」の魅力を聞いた

2019年12月 1日 08:00

装丁で本の世界観を表現

高松さんは日本評論社と福音館書店の出版社勤めを経て、2017年にひとり出版社「夕書房」(茨城県つくば市)を立ち上げた。芸術・人文系の書籍を中心に、年2冊ほどのペースで刊行しているという。

「天アンカットの美」とはどういうものなのか。Jタウンネットは11月22日、投稿者の高松さんに詳しい話を聞いた。

まずはなぜ天アンカットにするのか、そのメリットを高松さんはこう話す。

「切りそろえたのでは出せない微妙でやわらかな風合いが出せること、書物の長い歴史への敬意を表すことができることなどがあると思います。業界の方ですと、『おっ、天アンカットか、やるな』と内心グッとくるポイントでもあります」

今回、問い合わせがあった「彼岸の図書館-ぼくたちの『移住』のかたち」(青木真兵・青木海青子著)はブックデザイナーの名久井直子さんが造本設計を手掛けた。高松さんによれば、名久井さんはこの本の内容と雰囲気から「仮フランス装」という製本方法を選んだとのこと。仮フランス装と天アンカットはセットで使われることが多いそうだ。

「とくに『彼岸の図書館』は奈良の山村で借りた古民家を私設図書館にした夫婦の物語であり、効率や経済成長重視の生き方からの転換を提案する内容です。そのため、ピシッと切りそろえられすぎていない天アンカットの風合いは、とてもしっくりきていると思います」

高松さんは「紙の本というのは実際の本文だけでなく、造本によっても著者の思いや世界観を表現できる」としている。ストーリーに合った装丁を考えた結果、今回は天アンカットを採用したということだ。近年すっかり定着しつつある電子書籍では味わえない本の奥深い楽しみ方が、そこにある。

しかしその一方で、天アンカットにはデメリットもある。

「三方断ちをすれば折り込みが多少ずれていてもごまかせますが、天をアンカットにする場合は、折りの段階でも細心の注意と技術が必要になるため、手間と作業時間が余計にかかる。すなわち出版社としてはカットするよりかえってコストがかかりますし、納期も余分に計算しなくてはなりません」(高松さん)

裁断する箇所が減るため、工程が一つ減って楽になるのでは――そんな呑気なことを想像していたが現実は真逆。なんと通常の装丁よりも時間とお金がかかってしまうのだ。つまり、出版側のこだわりが詰まった製本法と言っていいだろう。

高松さんによれば、天アンカットは大手出版社の文庫や新書にも見られる。もしかしたら自分の持っている本の中にも天アンカットのものが混ざっているかもしれない。筆者も家に帰ったら本棚を探してみようと思う。

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