「なんで 『たばこ』は悪いのに 、パパは作ってるの?」 禁煙の時代を生きる「葉タバコ農家」の現実と情熱
経験がものを言う収穫作業
約3か月にわたる収穫作業。それも、ただ下から機械的に取っていけばいいというものではなく、熟した葉を見極める必要がある。
「収穫の作業は丁寧に行います。マメに畑を巡回して、1枚1枚、収穫に適した葉の見極めをするんです。
水稲などといった他の作物では、機械を使って収穫のタイミングを見計らうこともありますが、私は自分の目で見て見極める。経験がものを言う作業だと思います」(小久保さん)
小久保さんに畑を案内してもらいながら、収穫に適した葉はどんなものかも教えてもらった。
畑の葉の中には緑色のものと黄色いものがあった。これまでに広告などで見た「タバコの葉」のイメージから、筆者は当初、黄色く熟れているものが収穫間近の葉なのだろうと考えていた。しかし、実際に小久保さんから収穫を迎えそうな葉を見せてもらうと、そういうわけでもないらしい。
素人目には何か特徴があるようには見えなかったが、小久保さんの中には経験から培われた「収穫の基準」があるようだ。
そして、収穫した葉は乾燥・圧縮といった作業 のあと、梱包を行い出荷となる。
「野菜のように売るところを自分で見つけるわけではなくて、葉タバコは全量をJTが買い上げてくれます。
出荷した葉はJTの鑑定を受けて、例えばAやBといった具合でランク付けされて買い取られるんです」(小久保さん)
すべての作業が終わった9月から1月までは、畑の維持や整備の時間に充てられる。この時間も葉タバコ農家にとっては大切な時間だ。
小久保さんの畑を見ると、野菜の畑のように湿り気があって黒々とした土壌とは全く違い、砂地のように乾燥した土になっていた。これも、葉タバコ栽培には重要なポイントだという。
「野菜であれば、成分量が高い肥沃な土壌が好まれます。しかし、葉タバコはその逆で、肥沃な土壌だと成長し続けてしまって成熟ができない。野菜とは考え方が違うんです。
葉タバコは、低カロリーで肥沃すぎない土壌がちょうど良い。旭市は肥沃な土壌ではないので、葉タバコの栽培には向いている土地ですね」(小久保さん)