「なんで 『たばこ』は悪いのに 、パパは作ってるの?」 禁煙の時代を生きる「葉タバコ農家」の現実と情熱
野菜とは違う葉タバコ
向かったのは千葉県北東部の旭市。チーバくんで言うと、耳あたりの場所だ。
たばこの原料は葉タバコを乾燥させたもの。その葉の種類はさまざまで、代表的なものだと「バーレー種」「黄色種」などがある。バーレー種は香料がなじみやすい性質でチョコレートのような香り、黄色種は味つくりの核となる品種で、甘い香りと味が特徴だという。紙巻きたばこの紙の中には、これらをブレンドしたものが入っているのだ。
小久保和宏さん(44)と穴沢真弘さん(39)は、ここで黄色種の 葉タバコ農家を営んでいる。2人が筆者の取材に応じてくれた。
訪れたのは小久保さんの葉タバコ畑。約3ヘクタールの栽培面積をほこる畑は、まさに葉タバコ栽培の真っ最中だった。
人の手より大きな葉をつけた、膝丈ほどの高さの植物が、ずらりと並んでいる。もう少し経てば、人の背丈ほどの高さにまで成長するという。
小久保さんによると、葉タバコは2月に種まきを行う。その後、苗を育てる「育苗」を行い、3月に苗床から畑に植え付ける。そして、5月半ばから8月の約3か月の期間をかけて収穫をするスケジュールで動いているという。
スケジュールには葉タバコ特有だと思われる部分は見当たらない。しかし、仕事の内容を見てみると、野菜や米とは違った事情がある。
「野菜の場合、新鮮なうちに実を収穫するのが良しとされていますが、葉タバコは違います。葉タバコは、葉の熟成を待ちながら収穫をするんです。
成長期の葉だと味がキツくなってしまうんです。葉タバコは、一般的に下についている葉から順に熟すので、その成熟の度合いを見極めながらちょっとずつ収穫をします。収穫した葉も、幹に対してついていた位置を地面に近い場所から順に中葉、合葉、本葉、上葉の4種類に分けて 梱包していくという独特な作業もします」(小久保さん)