ココからあなたの
都道府県を選択!
全国
猛者
自販機
家族
グルメ
あの時はありがとう
旅先いい話

広島県北部ではお正月に「ワニの刺身」を食べるらしい

松葉 純一

松葉 純一

2020.12.03 06:00
0

「生姜醤油とネギを散らして食う」

幣束(@goshuinchou)さんのツイートより
幣束(@goshuinchou)さんのツイートより

「ワニ」を発見した日時、場所などについて、幣束さんに聞くと、「11月23日午後8時、広島県三次市市内のスーパーです」という返事が返ってきた。

「ワニ食のことは事前に知っていてスーパー回りましたが、無かったので3軒目に無かったら諦めようと思ってましたが、最後に見つけて良かったです、そういった感じなんで、普通に地元のスーパーでは並んでいて人気のある食材なんだと思います」

幣束さんは別ツイートでこうつぶやいている。

「日本神話に於ける因幡の白兎や豊玉姫の出産、また出雲國風土記に登場するワニは
(1)ワニはほんとにワニだよ
(2)ワニとはサメのことだよ
(3)特定の生物のことじゃなくて海中や海辺にいるなんか強い生き物のことだよ
等の説があり、良く知られるのは②のワニ=サメ説であり、その説の根拠となる一つが山陰地方でサメをワニと呼び食す文化があることであるので、私としては一度食べてみたいと思っていたが、念願叶ったというわけであります」

というわけで、この「刺身用ワニ」とはサメの刺身のことらしい。「(ネズミ)」は、サメが「ネズミザメ」であることを指すようだ。

実際に、念願の「ワニ」を食べた感想はどうだったのだろう?

幣束さんは、以下のように呟いていた。

「果物ナイフ買って切って食った。生姜醤油とネギを散らして食う。味は普通に美味いです、淡白なビンチョウマグロって感じっす」

Jタウンネット記者は、ワニ(サメ)食文化についてもっと知りたいと思い、三次市教育委員会に電話で聞いてみた。

幣束(@goshuinchou)さんのツイートより
幣束(@goshuinchou)さんのツイートより

電話で答えてくれたのは、三次市教育委員会の担当者だった。

「三次地方史研究会が、1998年に『<ものがたり>三次の歴史』という冊子を作成しており、その中のコラムでワニ(サメ)食文化について紹介されています。
1834年(天保5年)の文献に、山陰の行商人によって持ち込まれた『ワニのあぶり串』という産物が記録されています。明治中期には、島根県大田市にある石見銀山との間を結ぶ街道沿いに、商人の行き来があり、日本海の海産物と共に、ワニ(サメ)が運ばれていたようです」

三次市では、どのように食べられているのだろう?

「生姜醤油とネギを添えて、お刺身でいただきます。主にハレの日、特別な日のお祝いとして、食べられることが多いのではないでしょうか。お正月には欠かせない料理の一つかもしれません」

広島県でのサメ食について書かれた論文「広島県におけるサメ食慣行の伝承に関する考察―口和町の「ワニ」料理を中心に―」(升原且顕)によると、サメの肉にはアンモニアが蓄積されていて、臭いがあるのだそう。その臭いを消すために生姜醤油で食べるのが一般的だという。

ちなみに、このアンモニアのおかげで腐りにくく、半月ほどは刺身で食べられるそう。三次など広島県北部の山間地域では、明治時代からハレの日の料理としてサメの刺身が食べられていた。交通が未発達だった時代、海から離れた場所でも生の状態で食べられる数少ない魚がサメだったらしく、

「サメを『ワニ』と呼んだ人々にとって、この食材は遠い海を感じさせるものであった。
これを食べることが正月や祭りの楽しみを倍加させたのである」

と著者は説明している。

今回、ワニの刺身を食べた幣束さんのツイートにはこんな声も寄せられていた。

「私の亡き父が広島の県北出身なので、お祝い事やお正月は必ずワニの刺身を食べていました。懐かしいです」
「地元では切り身をお醤油で漬けて焼いたものがお正月のごちそうとして、 あとは『すくめ』と言って頭を茹でてほぐした身を大根おろしとお味噌、砂糖で味付けたものもあります」
「広島県人なので三次で食べましたが、お刺身もフライもなかなかおいしかった覚えがあります」

12月3日13時15分追記:記事初出時、文中の表記に一部誤りがあったため修正しました。

PAGETOP