合言葉は「門司のために」 北九州発の焼酎「地芋」には、地元への想いが詰まっていた
切るのも潰すのも手作業
小倉南区の無法松酒造に移動して、さっそく焼酎を作っていく。
まずは掘ったイモの泥を落とし、端の部分を切り落とす。いきなり始まったイモ切り大会に少し驚いたが、大きな機械がないためこの日やる分に関してはほぼ手作業で行うとのこと。残りのイモに関しては一部工程を業者に委託するそうだ。
「大きなイモは半分に切って!熱がまんべんなく通るように」―― そんなアドバイスも飛び、集まったプロジェクトの関係者たちは淡々と慣れた手つきでイモを切っていく。
切ったイモは蒸す機械に入れ、ふかして柔らかくする。機械の周りにはモクモクと蒸気が立ち込め、あっという間にサウナ状態に。ちょっといい匂いもしてきた。
約1時間後、このまま食べてしまいたいくらいホクホクとしたイモができたところで、謎のアナウンスが。
「男性陣のみなさん、ご協力お願いしま~す!」
いったい何が始まるの...?ヒントはイモをふかしている間に撮った、この写真の中にある。
用意されていたのは餅つき用の杵(キネ)。これで柔らかくなったイモたちを勢いよく潰していく。さすがにここは機械だろうと踏んでいたが、ここも当然の如く手作業なのだ...。
地芋の場合、イモは皮ごと潰していく。芋焼酎には皮のあるものとないものがあるといい、それで風味が変わるのだとか。
筆者もやってみたが、なかなかイモがしぶとい。潰すのは簡単だが、固形のイモをなくすのに時間がかかる。杵だけでは手が足りないため、すりこぎ棒や先ほど使っていたまな板をひっぱり出し、さらにはイモを冷ますために扇風機を上からかざす。まさに総力戦だ。
潰し具合で焼酎のまろやかさが変わる大事な作業。見た目はシュールだが、イモを潰す人も扇風機を持つ人もみんな真剣だ。時には冗談を飛ばしながら根気よく作業を続けるうちに、イモもいい感じになってきた。
ここで米こうじを発酵させた「もろみ」が登場。この米こうじも、白石さんの田んぼで収穫した米を活用している。門司産のサツマイモと米を使用し、門司の人の手を借りて作る... 門司にこだわりぬいた芋焼酎が「地芋」というわけだ。
定期的にかき混ぜる「攪拌(かくはん)」の作業をするなど、1週間ほど前からこの日のために仕込んできた。芋掘りのタイミングがずれると使えなくなってしまうため、無法松酒造との連絡を密に行ってきたという。被せていた袋を取ると、アルコールのいい匂いがあたりに漂った。
ここに、みんなで潰したイモを投入。今日できる作業はここまでだ。
イモを入れることで、もろみは黄味がかったベージュに近い色に。これを2週間発酵させたのち、蒸留、その後1か月ほど熟成させて完成だ。
完成した「地芋」は、北九州市のふるさと納税の返礼品にも登場する予定だ。