偶然が生んだ宝石のようなパン! 富山県朝日町の「ヒスイパン」
地域で愛されているパンを探して、全国各地をゆく「地域密着 愛されご当地パン」。今回は地元の名産物である翡翠(ヒスイ)のように輝く「ヒスイパン」を求めて、富山県朝日町の「清水製パン」を訪ねました。
清水製パンは1949年に創業以来、パンや和菓子などを製造販売しているほか、学校給食でもパンを提供しているため、地元では子どもから大人まで誰もが知るパン屋さんです。そんな清水製パンの看板商品がヒスイパンで、2010年に東京国際フォーラムで開催された「第一回 日本全国ご当地パン祭り」への出場をきっかけに、テレビや新聞などで全国的に取り上げられるようになりました。一体、どのようなパンなのでしょうか。早速、見てみましょう!
登場したのは、ライトグリーン色でコーティングされた、まん丸としたパン。表面は光沢があり、つやつやとしています。品のある黄緑色の輝きは、まさにヒスイのようです! 見た目からは想像ができませんが、どんな味なのでしょうか?
早速食べてみると、口の中に広がったのは二種類の甘み。ヒスイ色をしたコーティングの正体はようかん。そして、パンの中にはこしあんが入っていたのです!
あんぱんに加えてようかんと聞くと、甘すぎるのでは?と感じる人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。一見、味の主張が強そうな色のようかんは、意外にも甘さは控えめ。しっとりふわっとしたパンに包まれたこしあんも、ほどよく甘さが抑えられています。この奥ゆかしい甘みに加え、ようかんはきめ細かくなめらかな口あたりなので、上品な味わいが感じられました。また、表面にようかんがコーティングされているからでしょうか、まるで和菓子を食べているかのような気分にもなるので、お茶うけとしても活躍してくれそうです。
それにしても印象的なのは、鮮やかな色合いをしたようかんです。どのように作られているのでしょうか? 清水製パンの2代目社長である清水仁司さんに、その秘密を教えてもらいました。
ヒスイのような色はどうやって出しているのでしょうか?
清水さん「寒天と白あんで作ったようかんに、クチナシやベニコウジなどの植物を使って色付けしています。色付けには、抹茶を使ったこともありましたが、ここまで鮮やかな色にはなりませんでした。また、パンの焼き色とマッチするように、日によってヒスイ色の濃淡を調整しているんです。パンが薄い茶色に焼きあがったら、ヒスイ色も淡くするという具合に」
なめらかな食感や上品な甘さを出すためには、いくつかポイントがあるのだそう。
清水さん「ようかんのダマや、温めたときに出る気泡が消えてなくなるまで、30分ほどかけてじっくりと混ぜることで、なめらかな食感が生まれます。また、ようかんの味わいであんぱんが持つ甘みやうま味を邪魔しないことも大切。そのために、パンの片面を薄く覆うくらいの量を心がけています。とは言っても、ようかんは正確な分量があるわけではなく、感覚的につけています。毎日の作業で、甘さがちょうど良くなる量を体が覚えました(笑)」
手間暇を惜しまない心と、長年の経験で培われた職人的な感覚によって、ヒスイパンの上品な味わいが作り上げられていたのですね。