「辺鄙な山奥で見つけた老夫婦が営む飯屋。金を持っていなかった私は、他の客がいなくなるまで待ってから...」(兵庫県・50代男性)
「50円しかありません」
その日、東京で積んだ荷物を奈良の少し辺鄙な山奥まで届けました。荷物を降ろし終わる頃にはお腹が空いていて限界。少し走るとトラックを停められるスペースがあり、トイレもあったので、そこで休もうかと止まりました。
そこで目を引いたのは「めし」と書かれたのれん。ポケットには50円くらいしかなく、でも食いたい。店の前を行ったり来たりして、お客さんがいなくなるまで待ちました。そして恥を忍んで
「すみません、50円しかありません。
小さなオニギリでかまいません、作っていただけないでしょうか」
とお願いしたのです。
爺ちゃんと婆ちゃんが経営する店でした。「まあまあ、作りますよ」と優しく言ってもらえました(涙)。
そして、出てきたのはサバの煮付けでした。
「え!」と驚いていると、「残り物だけど食べなさい」と婆ちゃん。
そして今度は厨房の奥から爺ちゃんが「できたよ」と言って、目の前に中華そばを運んできました。 さらにポテトサラダにどんぶり一杯のご飯まで(涙)。「お金がありません」と伝えると
「冷めないうちに食べてちょうだいな」
見ず知らずの自分にここまでしてくれるなんて......。初めて「情け」を知りました。人の優しさを知りました。言葉もないまま、涙が止まりませんでした。
今まで負けてたまるかと堪えてきましたが、一気に溢れ出てしまったのです。