「駅でコンタクトを落とし、中腰で探す女子高生の私。飲み会帰りの男たちが近づいてきて『おねえちゃん...』」(東京都・50代女性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Rさん(東京都・50代女性)
高校生だったRさんはその日、彼との初デートを終え、楽しい気分で駅のホームにいた。
しかし、まばたきした瞬間、左のコンタクトレンズが目から飛び出してしまう。
気分は一気に急降下。視界はボンヤリで、心細くなってしまった彼女に、飲み会帰りらしき男性3人組が声をかけ......。
<Rさんの体験談>
35年くらい前、私は高校生でした。
その日は知り合ったばかりの彼と銀座で待ち合わせをして、初デートで映画館へ。場所はマリオンだったと思うのですが、なんの映画を見たのかは覚えていません。
ソニービルでパスタを食べてから、帰る方向が全く違った私たちは日比谷の改札口で別れ、私は、楽しい気分のまま地下鉄千代田線日比谷駅のホームで、電車を待っていました。
パチパチっとまばたきをしたはずみで...
時刻は19時頃。日曜日だったので平日ほどではありませんでしたが、それなりに人が多かったのを覚えています。
ドア位置のところに立ち、目が乾いてちょっと疲れているなぁと思いながらパチパチっとまばたきをしたときでした。
私の左目からコンタクトレンズが飛び出してしまったのです。
使い捨てコンタクトではありません。1年半くらい繰り返して使えるもので買ったばかりのものでした。
「あっ!」と思って慌てて足元を探そうとしましたが、右目だけの視力では、ぼやけてさっぱり見えません。
しかも、その後すぐに電車が入ってきてしまい、人が大勢降りてきました。困り果てて佇んでいる私を避けるようにしてホームから乗り込む人たちもいました。
「もうコンタクト割れちゃっただろうなぁ」
「あー、もうコンタクト割れちゃっただろうなぁ」
電車が去ったあと、私はそう思いながら中腰になり、心細い気持ちで一応探してみることに。すると
「おねぇちゃん、どしたのー?」
と、大きな声が聞こえてきました。
声の主は飲み会帰り風の3人組の男性でした。
「コンタクトを落としてしまって...」としょんぼり答えると3人は「おねぇちゃんは、動かないで!」と探しはじめてくれました。
すると、電車を利用するためにホームに来た人たちもだんだん集まってきて、人だかりになってきてしまいました。中には一緒に探してくれている人もいました。
「何かありましたか?」とライトを照らしながら駅員さんも確認に来ました。
1人のお兄さんが私の足元で...
あっと言う間に私は、遠巻きに30人くらいに囲まれるような状態に。
そのときです。3人組の内の1人のお兄さんが、私の足元近くをピッと指を差して
「あったぁ!」
と大きな声をあげました。コンタクトが見つかったのです。
私はお兄さんが拾いあげてくれたそれをハンカチでそっと受けとりました。
コンタクトは傷もついておらず、その先もちゃんと使えました。
恥ずかしくてなんと言ったかは覚えていませんが、心からお礼を言いました。
何故か握手までしていて、周りの人だかりの方々からは一斉に拍手が上がりました。ぼんやりとしか見えませんでしたが、みんなニコニコしていたように思います。
「顔から火が出るとはこのことか」と思うほど恥ずかしかったです。
お兄さん達は、ホームに入ってきた私とは反対方面の電車に乗り、大きく手を振って去って行きました。私もそのあとすぐ入ってきた電車に乗りました。
3人組のお兄さんたち、あの時は有難うございました。遠巻きに見守ってくださった方々も、駅員さんも、皆さん有難うございました。
わずか5分、10分の出来事でしたが、35年も経った今でも、思い出すたび嬉しい気持ちになります。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな、あの時自分を助けてくれた・親切にしてくれた人に伝えたい「ありがとう」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
Jタウンネットでは読者の皆様の「『ありがとう』と伝えたいエピソード」を募集している。
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(※本コラムでは、プライバシー配慮などのため、いただいた体験談を編集して掲載しています。あらかじめご了承ください)