「雨の中、赤ちゃんをタオルに包み病院を去る私。車の方へ走り出す寸前、知らないおじいさんが『貸し!』」(福岡県・30代女性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Tさん(福岡県・30代女性)
生まれたばかりの息子を連れて病院を訪れた帰りに、突然の大雨......。
近くに停めてある車まで、濡れながらでも走るしかないと覚悟を決めていたTさんに、見知らぬおじいさんが声をかけてきた。
<Tさんの体験談>
5年前、長男が産まれたばかりの頃の話です。
長男は出生後の採血でひとつだけ数値が引っかかり、退院翌日に再度検査をしに産院に行くことになりました。
病院に着いてエレベーターに乗ると、向こうの方から老夫婦が走っていらっしゃいました。
乗りたいのだろうと思った私は、開ボタンを押したまましばらく待っていました。
乗り込んできて会釈をされたご夫婦の表情を見て、「あ~お孫さんが生まれたんだろうな。嬉しそうだな。楽しみなんだろうな」と思ったのを今でも覚えています。
傘もなく、大雨の中...
その後、息子の検査が無事に終わり、帰ろうとしたら外はまさかの大雨。
その日私が車を停めていたところは運悪く、屋根がかかっていないところでした。
来るときは晴れていたので傘を持っていなかった私は、まだ生まれて数日の息子を持っていたタオルで包み、走って車に向かおうとしました。
すると、おじいさんが声をかけてきました。
「車どこね?」
病院に着いたとき、エレベーターで一緒になった方でした。偶然にも、老夫婦とは帰りの時間も同じだったのです。
「鍵、貸し!」
私が「あの白いのです」と、自分の車を伝えるとおじいさんは、「鍵、貸し!」。
そこで鍵をお渡しすると、雨の中を走って私の車まで行き、私が待っていた屋根のある入り口まで車を回してきてくださったのです。
「ありがとうございます!」私がお礼を言うと、今度はおばあさんのほうが
「じいじも孫が生まれたばっかりでほっとけんかったんよ。困った時はお互い様だから」
と笑顔で言ってくださいました。
初めてのお産と初めての授乳で、生まれたばかりにも関わらずすでに寝不足続きで少しバテていた私は、その行動とお言葉にとても救われ、その日はいつもよりもうんっと息子が愛おしく思えました。
「あのときのおじいさんのように...」
お二人とはそれ以降はお会いすることもなく、今となってはもう、お顔もおぼろげです。
ですが、5年経った今でもあの時の事を思い出すと、胸がほっこりします。
子供を持つと手が足りないことやどうしようかな、と悩む場面がたくさんやってきます。
大荷物を抱えているのに抱っことせがまれる時や、あの日のような雨の中を子連れ、特に乳児連れで移動する時もそんな場面の一つです。
そんな時に「手伝おうか」と言葉をかけていただけるのは、とても嬉しいものでした。
長男もすっかり成長し、いまや2人の弟のお兄ちゃんになりました。あのときのおじいさんのように自然に誰かを助けられるかっこいい人になって欲しいなと思います。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな、あの時自分を助けてくれた・親切にしてくれた人に伝えたい「ありがとう」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
Jタウンネットでは読者の皆さんの「『ありがとう』と伝えたいエピソード」を募集している。
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