北九州市で「100億ドルの夜景」が見られるって知ってた? 現地カメラマンに聞く、きらめく光を捉える方法
皿倉山から「100億ドルの夜景」を撮ってみた
7月12日19時。筆者は皿倉山ケーブルカーの山麓駅(八幡東区)にいた。
「世界ってこんなに綺麗だったんだ...」ケーブルカー近くの駐車場から、初夏の夕暮れに染まる北九州市の街並みを眺めて物思いにふける。このままずっとここにいたい。
時刻はまもなく19時20分。ケーブルカーの出発に合わせて、年配のスタッフが叫ぶ。
スタッフ「出発するぞ~~~」
なんだろう、このジブリ感。
山麓駅からはケーブルカーとスロープカーを乗り継いで、標高622メートルの展望台に向かう。編集長が手配してくれた「先生」とは、そこで会う約束だ。
ケーブルカー山麓駅からおよそ10分で展望台に到着。月曜だというのに若者、夫婦、ご婦人グループなど、人影がちらほら見える。地元民にも愛されている場所なのだろう。
そして時刻は19時45分。北九州市の街は薄暮に包まれている。空と海の境界が曖昧になっているのが幻想的だ。またジブリで恐縮だが、海の見える街にやってきたキキの気持ちになる。
いっそのこと住み着いてしまおうか...そんなことを考えながら展望台の端に目をやると、街ではなく三日月に向かってカメラを向ける男性の姿が。
そう。この人こそ、今日カメラを教えてくれる戸次貴之(べっき・たかゆき)さん(46)だ。
戸次さんはカメラ歴15年のアマチュアカメラマン。北九州市在住で、九州北部を中心とした工場夜景や風景を撮影している。本業は別にあるが、平日の仕事終わりや仕事前にも撮影に出かけるほど、大の写真好きだ。
戸次さん「空気が澄んでていいですねえ。街が良く見えます!」
どうやら今夜はかなり良いコンディションらしい。基本的に、雨が降る、曇天で雲が極端に落ちているということがなければ、夜景は撮れるそうだ。
「月を撮る戸次さんを撮ってもいいですか」「ええっ!いいですよ(笑)」...そんなやり取りをしているうちに、時刻は20時を過ぎた。あたりは完全に暗くなり、気づけば色とりどりのきらびやかな夜景が、眼下に広がっていた。
満を持して、みなさんにお見せしよう。これが「100億ドルの夜景」だ!
さすがカメラ歴15年の実力。目に見えている光景が、よりいっそう輝いて写し出されている。望遠レンズを使えば、赤くライトアップされた「若戸大橋」もバッチリ撮影できる。
筆者「さ~て、私も撮ってみますかね!」
普段はオートモードに甘えてばかりの筆者だが、今回は違う。自分なりにいろいろ試し、初めての夜景撮影に挑んだ結果がこれだ。
...何をどうしたらこうなるのか、自分でも思い出せない。闇よりも深い暗黒の世界が写し出されてしまった。
筆者「先生!なにも写りません!」
戸次さん「う~ん、これはひどいですねえ(笑)
夜景を撮るときはF値やシャッター速度を自由に変えれるマニュアルモード(M)をおススメします。ただこれはちょっと難しいので、初心者は絞り優先モード(A/Av)を使うといいと思います!」
※絞り優先モード...レンズから取り込む光の量(F値)を調節する「絞り」を手動で操る。F値を大きくすると絞りは絞られ、ピントの合う範囲は広くなり、写真は暗くなる。
戸次さん「F値は9.0くらいですかねえ...ISO感度は400くらいでどうでしょうか!」
※ISO感度...ISO感度を上げることで、カメラが光を捉える力が上がる。ISO感度が高いほど写真は明るくなるが、画質は悪くなる。
筆者「先生、暗いのにISO感度400は低すぎませんか?」
戸次さん「三脚にカメラを取り付けて撮影するときは手ブレの心配がないので、ISO感度を低くして画質を良くします。それに伴い、シャッター速度は長くなりますねえ」
筆者「三脚...だと...?」
戸次さんに言われるがまま設定すると、シャッター速度は6秒に。つまりどういうことか...シャッターを押したあと、6秒間カメラを固定しなければならないのだ。人力のみでは、まず不可能だろう。
というわけで、夜景撮影に「三脚」はほぼマストアイテム。ご参考までに、三脚を使わず四苦八苦しながら筆者が撮った写真がこちらだ。
正直に言おう。三脚なしはめちゃくちゃ撮りづらい。
てすりでカメラを支えても、微妙なブレが生じてしまう...。
戸次さん「夜景撮影に三脚はまず必須でしょうね!ない場合はどこかにカメラを載せるという手もありますが、落とすかもしれないのであまりおススメはしませんねえ」
筆者「うう...そうだったんですね...」
戸次さん「あっ、三脚を使う時はカメラの『手ブレ補正』を外してくださいね。誤補正されるかもしれないので」
そうこうしているうちに気づけば時刻は21時を回っている。私たちは皿倉山を後にし、次の夜景スポットへと向かった。