「東京大学」をテイクアウトして食べてみた! 受験生の街・代々木で生まれた美味しい「願掛け」
受験生に「楽しくご飯を食べてほしい」
店主によれば、しょうが亭ではテイクアウトの「大学弁当」だけでなく、店内で食べられる定食も大学名を冠しているそう。どちらも始めたのは、40年ほど前のこと。その経緯を尋ねたところ、そのユニークな取り組みは、店の立地に関係していた。
「今はもうそこまでではないですが、以前、代々木ゼミナールさんが近いこの辺りは、受験生の街でした。
うちも、学生さんがいっぱい来てくださっていたのですが、当時は『受験戦争』なんて言葉が流行っていたときで、食べながらもずっと勉強しているという方もたくさんいたんです。
そんな学生さんたちに、せめてご飯の時間だけでも気を抜いて、笑って楽しくご飯を食べてほしいな、といろいろ考えていたんですね。
そうしたら、うちでアルバイトをしていた大学生が『メニューに大学の名前をつけたら面白いし願掛けにもなるんじゃないか』と提案してくれて、それから40年続けています」(店主)
店主によれば、元々は東京六大学(東京大学・慶応義塾大学・早稲田大学・立教大学・明治大学・法政大学の6つ、順番はしょうが亭のメニュー表に準ずる)の名前をつけたそうだが、常連のお客さんから「この大学を受けるからメニューに入れてほしい」といった要望があり、どんどんメニューが増えていった。予備校に通っていた学生たちにとって、この店が大切な場所だったことがうかがえる。
また、店内で食べられる定食だけではなく、弁当も販売する理由にも、学生たちに対する店主のあたたかい愛が感じられた。
「お昼どきになると店内が混みあって、なかなかお店に入れない子とかも結構いたんです。
でも、学生さんたちって午後の授業の前にお昼を食べ終わらないといけないじゃないですか。
だから、店に入れない学生さんたちのためにお弁当も作りました」
代ゼミの授業オンライン化や少子化の影響もあってか、今は学生街というよりオフィス街の印象が強くなっているという代々木。店主は、
「最近はサラリーマンの常連さんとかが多いです。皆さん、自分の母校を頼まれたり、『面白い店があるんだよ』って春になると新入社員の方を連れてきてくださったり、楽しんでいただいています」
と話す。また、学生時代に通っていたという元・受験生のお客さんが懐かしんで来ることも多いそうだ。