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「東京大学」をテイクアウトして食べてみた! 受験生の街・代々木で生まれた美味しい「願掛け」

井上 慧果

井上 慧果

2021.05.19 06:00
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大学をテイクアウト?(画像は編集部撮影)
大学をテイクアウト?(画像は編集部撮影)
「テイクアウトできます」

そう書かれた下に、

「東京大学 850円」
「慶応大学 750円」
「上智大学 950円」

...と、都内の13校の大学と「医学部」がズラリと並んでいる。しかも、お手頃な価格と共に。

大学名の下には、「ひれかつ」「エビフライ」「カレーコロッケ」「ハンバーグ」「チキンカツ」と書かれているところを見ると、どうやらこれは、お弁当のメニューのようだ。

しかし、なぜ、大学名が......?

この謎すぎるメニューが、ツイッターで注目を集めている。ユーザーからは

「どういうこと?」
「大学自体をお持ち帰りできるかと思ったわ」
「母校の名前があってびっくり」
「医学部ってどこの大学だよwww」
「どれもうまそう」
「ポークしょうが焼き大学に入りたい」

などの声が上がっている。

また、「学食をお弁当にしているのか」「出身大学によって値段が変わるのか」といった推測も飛び交っていた。

一体、このお弁当は何なのだろう。

真相を知るべく、Jタウンネット記者は11日、この「大学弁当」を販売する「しょうが亭」(東京都渋谷区)を電話で取材。店主に話を聞いた。

受験生に「楽しくご飯を食べてほしい」

しょうが亭(写真は編集部撮影)
しょうが亭(写真は編集部撮影)

店主によれば、しょうが亭ではテイクアウトの「大学弁当」だけでなく、店内で食べられる定食も大学名を冠しているそう。どちらも始めたのは、40年ほど前のこと。その経緯を尋ねたところ、そのユニークな取り組みは、店の立地に関係していた。

「今はもうそこまでではないですが、以前、代々木ゼミナールさんが近いこの辺りは、受験生の街でした。
うちも、学生さんがいっぱい来てくださっていたのですが、当時は『受験戦争』なんて言葉が流行っていたときで、食べながらもずっと勉強しているという方もたくさんいたんです。
そんな学生さんたちに、せめてご飯の時間だけでも気を抜いて、笑って楽しくご飯を食べてほしいな、といろいろ考えていたんですね。
そうしたら、うちでアルバイトをしていた大学生が『メニューに大学の名前をつけたら面白いし願掛けにもなるんじゃないか』と提案してくれて、それから40年続けています」(店主)

店主によれば、元々は東京六大学(東京大学・慶応義塾大学・早稲田大学・立教大学・明治大学・法政大学の6つ、順番はしょうが亭のメニュー表に準ずる)の名前をつけたそうだが、常連のお客さんから「この大学を受けるからメニューに入れてほしい」といった要望があり、どんどんメニューが増えていった。予備校に通っていた学生たちにとって、この店が大切な場所だったことがうかがえる。

また、店内で食べられる定食だけではなく、弁当も販売する理由にも、学生たちに対する店主のあたたかい愛が感じられた。

「お昼どきになると店内が混みあって、なかなかお店に入れない子とかも結構いたんです。
でも、学生さんたちって午後の授業の前にお昼を食べ終わらないといけないじゃないですか。
だから、店に入れない学生さんたちのためにお弁当も作りました」
遊び心のある「進学案内」(画像は編集部撮影)
遊び心のある「進学案内」(画像は編集部撮影)

代ゼミの授業オンライン化や少子化の影響もあってか、今は学生街というよりオフィス街の印象が強くなっているという代々木。店主は、

「最近はサラリーマンの常連さんとかが多いです。皆さん、自分の母校を頼まれたり、『面白い店があるんだよ』って春になると新入社員の方を連れてきてくださったり、楽しんでいただいています」

と話す。また、学生時代に通っていたという元・受験生のお客さんが懐かしんで来ることも多いそうだ。

「大学」、食べてみた

お客さんを思う気持ちとユーモアがたっぷり詰まった大学名メニュー、話を聞けば聞くほど食べたくなってしまった。

そこで取材翌日の12日、Jタウンネット記者は実際にしょうが亭を訪れた。

店内で定食を食べるのも魅力的だが、今回はせっかくなので話題となったお弁当を注文することに。

日本大学(画像は編集部撮影)
日本大学(画像は編集部撮影)

注文したのは、お店の名前にもある創業当初からの看板メニューである「しょうが焼き」と、お弁当の定番「エビフライ」が入った「日本大学」。

大きなエビが二本入っているのを見るだけで心が躍ってしまう。

このメニューの理由を店主に聞くと、

「エビが二本で日本大学です」

と笑顔で教えてくれた。ダジャレだった......。

他にも「上智大学は英語が強いのでアルファベットのABCにかけてエビフライ」、「コロッケが一つで一橋大学」など、とにかく「楽しんでご飯を食べてもらいたい」という店主の思いが伝わってきた。

サクサクのエビフライと甘辛く生姜の効いた豚肉が、白ご飯にぴったり。これをお昼に食べた受験生たちは、午後の授業もきっと頑張れたことだろう......と当時に思いを馳せてしまう。もちろん、サラリーマンのお腹にもがつんとくるボリュームだ。

そして大学といえば、やっぱり外せない。日本の大学の頂点も、テイクアウトしてみた。

東京大学(画像は編集部撮影)
東京大学(画像は編集部撮影)

こちらもがっつりボリューミー。

ひれかつ、しぐれ煮、味付け玉子、糸こんにゃくの煮物、カレー味のマカロニ、漬物といった6種類のおかずが入っていて、これは「六大学」にちなんでいるそう。

「やっぱり東京大学なので、カツの中でも一番いいひれかつにしています」

と店主。

かつの上にかかっているのはチーズソース。とても濃厚で、柔らかくさっぱりしたひれ肉によく合う。お肉をたくさん摂れるのでこれならスタミナがついて、受験だけでなく何にでも勝てそうだ。

ちなみに店主によれば、

「ここ数年はコンビニが増えてテイクアウトの数も減っていましたが、最近はコロナ禍の影響でまたお弁当のご注文も増えてきました」

とのことだった。

ぜひ皆さんも、代々木周辺を訪れた際にはぜひ大学弁当、大学定食を食べてみてはいかがだろうか。

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