島民でも分からない? 「与那国語」で書かれた食育標語が難解すぎてもはや呪文
若い人にも「与那国語」を知ってもらいたい
2020年5月8日、東盛さんがツイッター(@aika_higamo)で自身が作った標語を投稿すると、
「イントネーションによっては北欧っぽい響きにも聞こえるかも」
「マレーシアかインドネシアの言葉みたい」
「ロシア語のカタカナ読みに見えたw」
など、外国の言葉に見えたという反応が。沖縄県や与那国島出身のユーザーからも
「県民だけどさっぱり分からない」
「島民でも分からぬ笑」
とコメントが寄せられていた。
文化庁のウェブサイトによると、与那国語は消滅の危機にある言葉で、ユネスコが2009年2月に発表した「Atlas of the World's Languages in Danger」(第3版)では、「Severely endangered」(重大な危険)と評価されている。
Jタウンネット編集部が11日、東盛さんに取材したところ、与那国語は島内でも60代以上の高年層が使う言葉で、「私達若者世代では少しの単語は分かっても、聞くこと話すことは困難です」とのことだ。
標語を考えたのは8年ほど前。当時、与那国中学校は食育に力を入れており、30人ほどの全校生徒に対して食育に関する標語を考える課題が出されていた。そこで東盛さんは、インパクトのある標語にするために与那国語で作ることを閃き、祖父と母に教えてもらいながら考えたという。
標語に使われている単語がそれぞれどんな意味なのか東盛さんに聞くと、こう解説してくれた。
「ハイムヌヤ=食べものは
ハイムヌは食べ物という意味です。日本語の食らい物(kuraimono)が変化したものです。
ブールヌグラヌンキ=全部残さずに
ブールが全部という意味で、ブルとも言ったりします。語源は日本語の(諸)に対応しています。
ヌグラヌンキは残さずにという意味。ヌグラヌンは残すの否定形。
ウヤシワリヨー=お召あがりくださいね
ウヤン=召し上がる
~ワルン=~(し)なさる
動詞の連用形に接続して<尊敬>を表す。
ウヤシワリでもいいんですけど、ヨーをいれると柔らかい響きになるんです」
標語を書くとき、東盛さんは「多分、同世代にはこの標語の看板を見ても分からないだろうな」と思っていた。それでも与那国語を使ったのは、若い世代が与那国語を知ってもらいたいと考えたから。
「これ見て誰か与那国語の分かる人に意味を聞いたら、私が母や祖父に聞いたみたいに、与那国語の継承にもつながると思いました」(東盛さん)
立て看板を見た観光客が、通りすがりの「島のおばぁ」に意味を聞き、教わったこともあるそうだ。