<東京暮らし(1)>さようなら築地市場
2018.06.30 11:00
残業明けに歩いた思い出
最後に少し思い出話を。私が初めて場内を訪れたのは、約30年前だった。当時勤めていた出版社が新橋にあり、深夜残業を終えた、確か土曜の明け方。同僚と「築地で寿司だー!」と繰り出した。
当時も場内はどう歩いたらよいかよくわからず、今と違ってネットのグルメランキングなどもないから、外から店内を覗いて適当にお店を選んで入った。
今と変わらなかったのは、ネタの新鮮さ、寿司を握る職人さんの素っ気なさ、そしてあまり安くはないお値段。20代だった私は、「築地は安くて美味いんじゃなくて、高くて美味いんだ」と思い知った。
施設は古び、鉄道輸送を前提に造られたために使い勝手が悪くなった築地。いよいよ移転し、消えてしまうと思うと、やはり感傷を禁じ得ない。東京人にはきっと、人それぞれの築地があるんだろう。
さようなら、そしてありがとう、築地市場。