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<東京暮らし(1)>さようなら築地市場

中島 早苗

中島 早苗

2018.06.30 11:00
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残業明けに歩いた思い出

豊洲に移る店、築地に残る店...(2018年6月、Jタウンネット撮影)
豊洲に移る店、築地に残る店...(2018年6月、Jタウンネット撮影)

   最後に少し思い出話を。私が初めて場内を訪れたのは、約30年前だった。当時勤めていた出版社が新橋にあり、深夜残業を終えた、確か土曜の明け方。同僚と「築地で寿司だー!」と繰り出した。

   当時も場内はどう歩いたらよいかよくわからず、今と違ってネットのグルメランキングなどもないから、外から店内を覗いて適当にお店を選んで入った。

   今と変わらなかったのは、ネタの新鮮さ、寿司を握る職人さんの素っ気なさ、そしてあまり安くはないお値段。20代だった私は、「築地は安くて美味いんじゃなくて、高くて美味いんだ」と思い知った。

   施設は古び、鉄道輸送を前提に造られたために使い勝手が悪くなった築地。いよいよ移転し、消えてしまうと思うと、やはり感傷を禁じ得ない。東京人にはきっと、人それぞれの築地があるんだろう。

   さようなら、そしてありがとう、築地市場。

中島早苗

今回の筆者:中島早苗(なかじま・さなえ)

1963年東京墨田区生まれ。婦人画報社(現ハースト婦人画報社)「モダンリビング」副編集長等を経て、現在、東京新聞情報紙「暮らすめいと」編集長。暮らしやインテリアなどをテーマに著述活動も行う。著書に『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)、『建築家と造る 家族がもっと元気になれる家』(講談社+α新書)、『ひとりを楽しむ いい部屋づくりのヒント』(中経の文庫)ほか。
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