<東京暮らし(1)>さようなら築地市場
混沌、ディープな「プロの仕事場」
築地市場(以下、築地)には「場内」と「場外」があり、一般の人も自由に買い物や食事ができるのは、場外の方。場内は本当の市場なので、早朝からセリが行われ、仲卸売り場では、プロの料理人や飲食店の仕入れ担当者が魚介類を買い求める光景が、毎朝繰り広げられる。
気軽に立ち入れるのは場外だが、こちらは豊洲移転後も残るし、いわゆる「築地市場」の姿を見られるのは場内の方だ。ただし、場内は基本的にはプロの仕事場。見学者用の通路などはなく、大した道案内もないので、初めて訪れた人は、戸惑ってしまうだろう。だいたい、どこまでが入ってよいエリアなのか、仲卸売り場はどこなのかも、素人にはよくわからない。加えて、鉄道輸送から今やトラック輸送に取って代わられた場内はカオスのようで、トラックやターレと呼ばれる電動運搬車が所狭しと行き交い、ぼんやり歩いていると危険だし、市場人のじゃまになる。
でも、本来観光のためではないプロ空間の混沌と、年季の入った施設の中で毎朝暗いうちから働く市場人、扱われるおびただしい量の鮮魚を間近で見られるディープさこそが、築地の魅力なのではないか。特に外国人観光客に人気が高いため、場内には、どこから集まったのかと驚く程の数の外国人が見学と、Sushiを目当てに訪れている。世界に類を見ない巨大な鮮魚市場を体感でき、巨大なマグロのセリを見物し、とびきり新鮮なネタで握られるSushiをいっぺんに堪能できるのはここ築地しかないからかもしれない。