<東京暮らし(1)>さようなら築地市場
よけいな加工なき「海鮮丼」
確かに間違いなく新鮮で、特上クラスのネタが入っているとはいえ、ランチでいただくことを思うと、ここで人気の寿司店は少し値が張る。おまかせ握り一人前で、4,000円ぐらい。そして何より、人気店ほど半端ない行列で、長い店は早朝に訪れても5時間待ちというから、今回私ははなから寿司は諦めた。
場内の飲食店の営業は朝から14時頃まで。寿司店以外は時間帯を選べば、それほど並ばずに入ることができる。今回私は海鮮丼と、天丼をいただくことにした(もちろん別々の日に。同じ日にハシゴをする人もいるようだが)。
海鮮丼(2,300円)もネタはピカピカ光り、肉厚でフレッシュ。まさにさっき仕入れてすぐさばきました、というのがわかる鮮度だ。サヨリ、中トロ、アジ、ハマチ、ウニ、イクラのネタはどれもジューシーだが、特に中トロは甘くて絶品。いただきながら、よけいな加工がされていない新鮮な食べ物は、脳が喜ぶのだと実感。頭が冴えるおいしさだ。
しかし築地の実力は生魚だけではなかった。別の日にいただいた天丼の衝撃的なおいしさ。あんなにフワッとサクサクのキスの天ぷらを食べたことがあっただろうか。そして3尾の芝エビの劇的な香ばしさ。加えて稚鮎、赤イカ、エビにナス、シシトウというフレッシュなネタを、丁寧に時間をかけて揚げた「本日の天丼」は、こんなに沢山の種類が入って1,200円也。築地の心意気と良心を感じる素晴らしい天丼で、必ずまたいただきに来ようと誓った。
海鮮丼の「丼匠」さん、天丼の「天房」さんとも、10月に豊洲に移転すると言う。移転で雰囲気は失われても、ご主人や料理人さんが同じなら、味は変わらないはずだ。そもそも築地だって、開設されたその昔は埋め立て地。時間をかけて豊洲も、市場らしくなっていくに違いない。