ココからあなたの
都道府県を選択!
全国
猛者
自販機
家族
グルメ
あの時はありがとう
旅先いい話

「被災地を観光する」岩手県陸前高田市【前編】:傷跡から記念公園へ 原風景を失った街が目指す姿

中丸 謙一朗

中丸 謙一朗

2018.06.13 17:00
0

任務遂行というやりがい

   陸前高田の街の中心部は甚大な被害にあった。震災前のものはひとつとして残っていない。道さえも新たに付け替えられ故郷に帰省する人間さえも道に迷わせる。震災に強いまちづくりを目指し、陸前高田の人間たちが行ったことは、街を10メートル以上嵩上げし、街を一から作り直すということだった。

新設された住宅用の高台から市内を望むと津波の被害状況が想像できる。
新設された住宅用の高台から市内を望むと津波の被害状況が想像できる。

   前述したベルトコンベアによる大規模な土木工事は終了し、現在、街の中心部にはピカピカのショッピングモールが建っている。生活必需品の調達だけでなく、地元の憩いのスペースも兼ねられるよう設計され、地域の図書館や新たに入った路面の飲食店などで徐々に賑わいを取り戻している。

   昼食を取りながら、この街に派遣されてきた中丸勝典氏の現在の心境を聞いた。

「震災後、自分でもなにか被災者の役に立つことができないかと思い、南相馬市にボランティアで訪れるようになりました。仕事の休みを使って通っていたのですが、どうしても自分のなかに半端な気持ちが残った。そんなときに役所で派遣の募集があり、"我が意を得たり"と応募しました。以前には障害福祉を担当していて、社会的弱者、身体的弱者の方々の支援をする立場だったので、ボランティア自体に違和感はありません。でも、こういう派遣も人を助けるためにやっていると自負していたのだけど、それによって自分も救われている、高められているなんて思うと、感慨深いものがあります」。

   それにしても、家族と離れ単身赴任までして遂行したことに対する疑問は残る。彼は20代30代の若手ではない。もう定年が目前の歳である。

「祖父が職業軍人で、父もその影響を受けた公務員でした。そのせいか、家では戦争映画を観ては主人公の生き様に共感していた。もちろん、戦争ではないけれど、僕は組織の一員として辞令が出ればどこへでも行き、任に当たります。カッコつけるわけじゃありませんが、"任務"とか"ミッション"って言葉に昔から惹かれるんです(笑)」。

2017年4月にオープンした陸前高田の中核となる大型商業施設「アバッセたかた」。
2017年4月にオープンした陸前高田の中核となる大型商業施設「アバッセたかた」。

僕たちは原風景を二度失った
続きを読む
PAGETOP