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神奈川県内に遺跡のように残る「ともしびゾーン」の行方を追う

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2015.02.27 12:16
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車の交通ルールは道路交通法等に定められている。全国共通でローカルルールは存在しないと思いがちだが、交通事故が最も多かった1970年に施行された「交通安全対策基本法」は、国やドライバーだけでなく、地方公共団体も交通安全の責任があると規定している。

安全確保の責任がある以上、それぞれの土地の実情にあった施策を導入するのは当然のこと。国法の範囲内ではあるものの、各自治体が定めた独自の標識が道路上に存在する。

見たことのない注意文句が、いきなり目に飛び込んでくる

少々意味が掴みにくい標識が神奈川県にある。その名前は「ともしびゾーン」。神奈川県横浜市をはじめ県内各地で目撃されている。
注意を促しているのか、それとも別のことを言いたいのか――。運転者に訴えるにはマイルドなニュアンスだ。

ツイッターに投稿されている目撃談で多いのは路面にペイントされているケース。いずれも文字がかすれ気味で、まるで遺跡のよう。

プレートタイプも多数現存

道路に立っている柱に取り付けられているプレートもある。ネットに寄せられた情報を整理した限りだと、3色(青・赤・黄)と2色(青・赤)の2パターンが存在するようだ。
もっとも、元々3色パターンしかなかったところ、黄が退色したため2色化した可能性も否定できない。

神奈川県内の道路に存在する標識「ともしびゾーン」の再現イラスト(編集部作成)
神奈川県内の道路に存在する標識「ともしびゾーン」の再現イラスト(編集部作成)

ツイッターに投稿された画像を見比べると、内部の円の外側は白と異なる塗装が施されていうように見える。
あれこれ調べていると、次の事実にたどり着いた。

「ともしびゾーン」は、病院など交通弱者がよく利用する施設近くに、ドライバーや歩行者へ注意を促すため、1981年に設けられた。護る対象からするとシルバーソーンに近い印象だが、「ともしび」にはより広い意味が込められている。

1976年、当時の長州神奈川県知事は県民に対して「ともしび運動」を提唱した。
この運動は、縦割り行政から生じる弊害を乗り越え、福祉・教育・防災・安全などの事業を統合的に進め、障がいや年齢などに関係なく全ての人たちが手を携えて歩むことができる福祉社会づくりを推進しようというもの。実はともしびゾーンは、この運動から名前をもらったものだ。

黄が使用されたのは、「夕暮れ時は事故が発生しがちな時間だから注意しなさい」、そして赤い炎は「暗くなると危ないから、ともしび(=点灯)をつけましょう」ということなのだろうか。

県内に56カ所あった「ともしびゾーン」

積もる疑問を解消するため、Jタウンネットは神奈川県警の交通規制課の担当者に尋ねた。

ともしびゾーンは警察と県や市町村が協力して設置した指導標識で、計56カ所あった。標識はゾーンの境界に設置されたため、数としてはもっと多い。

このうち警察が設置したのは補助標識。つまり「ここから」「ここまで」など文字だけのプレートだけ。「警戒標識」に区分される菱型のプレートや路面のプリントは、自治体が担当した。絵柄の色が微妙に異なっていたのは、どうやら設置者つまり自治体が別々だったことに起因しているようだ。

残念なことに、2006年のバリアフリー新法施行と入れ替わる形で「ともしびゾーン」は廃止されてしまった。

「警察が設置したものは見つけ次第撤去し、もうほとんどないはずです。自治体分は管轄外なので、全自治体に問い合わせてみないと残存数は分からないですね」(神奈川県警の担当者)

ともしびゾーンが廃止されたいま、神奈川独自の標識はない。ということは――。「ともしびゾーン」は、神奈川が交通行政で独自性を発揮した貴重な遺跡といえそうだ。まだ残っている標識などを見つけたときには、先人たちの取り組みに思いを馳せてあげたい。

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