それでも「2020年ヒロシマ五輪」が見たかった
2014.02.10 20:21
内村航平選手が有終の美
8月23日夜、広島県三原市。県東部に位置する人口10万人のこの街の駅前の一角には、特設の大型街頭ビジョンが設けられていた。2006年にデパートが撤退して以降、空き地となっている区画だ。市の中心部が14年も「遊んでいる」のは問題ではあるが、今回は格好のパブリックビューイング会場となった。
モニターには、ビッグアーチで行われている閉会式の様子が映し出されていた。集まった市民たちは、時に歓声を上げながらその模様を見守る。
広島空港の所在地であり、体操の会場が設けられた三原にも、五輪期間中多くの人が訪れた。特に、内村航平選手が年齢の壁を越えて見事金メダルを獲得したときには、多数の報道陣も詰めかけ、まさに町中がお祭り騒ぎとなった。
しかし、その五輪ももう終わる。
そうすれば、地元はまた山積する課題と向き合わなければいけない。駅前一等地の空き地が象徴する空洞化、進む人口減、財政問題――もちろんそれは、広島市含め他の自治体も同じだ。
それでも、五輪を「なしとげた」人々の表情は明るい。
モニターの向こうで、折り鶴をかたどった花火が上がる。盛大な拍手が、夜の駅前に響いた。
(※この記事は、幻に終わった2020年ヒロシマ・オリンピックをシミュレートしたフィクション記事です。広島市による2010年時点の構想などを元にしていますが、実在の人物、都市などには一切関係ありません)