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それでも「2020年ヒロシマ五輪」が見たかった

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2014.02.10 20:21
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ソチ五輪が始まった。見る者の胸を熱くする、世界のトップ選手たちの競演――6年後には、東京がその舞台となる。テレビの前で、来る2020年に思いを馳せる人も少なくないだろう。

ところで2020年の五輪招致に、東京以外からも手を挙げていた日本の都市があったことを覚えているだろうか。

そう、広島だ。

結局は立候補を断念することになったものの、その構想には、海外からも支持の声が少なくなかった。

もし、幻の「ヒロシマ・オリンピック」が実現していたら――。

有吉司会、デーモン閣下、永ちゃんも登場

2020年8月7日――広島市の北部にあり、サンフレッチェの本拠地としても知られる広島ビッグアーチ。7万人の観衆が見守る中、「ヒロシマ・オリンピック」が幕を開けた。

広島市では五輪開催の場合、ビッグアーチを仮設スタンド増設で7万人会場にすることを計画していた(基本計画案より)
広島市では五輪開催の場合、ビッグアーチを仮設スタンド増設で7万人会場にすることを計画していた(基本計画案より)

前日、8月6日は原爆投下から75年の節目の日。開会式でも広島平和公園と中継を繋ぎながら、プロジェクションマッピングを使った原爆ドームを初めとする被爆前の広島市の「復元」に始まり、市内の小学生による合唱曲「折り鶴」の披露、アニメ版「はだしのゲン」上映に加え、吉永小百合さんによる原爆詩の朗読など、平和へのメッセージを強く打ち出す内容となった。

もちろん、恒例のライブステージも。2013年、異例の毒舌スピーチで招致を成功させた有吉弘行さん(熊野町出身)、そして綾瀬はるかさん(広島市出身)の司会で、地元ゆかりのアーティストたちが次々とパフォーマンスを繰り広げる。

特に、今や世界的テクノポップスターとなったPerfumeのステージには、大きく会場が沸いた。またデーモン閣下も「小学生時代を広島で過ごした」縁で特別出演、

「閣下は地獄出身だろwwwwwww」

などと2ちゃんねるの実況板が陥落する騒ぎとなった。締めは矢沢永吉さんで、71歳とは思えぬパワフルな歌声に、思わず涙する人も。

聖火リレーの最終走者は、元陸上選手の坂井義則さんだ。坂井さんは原爆が投下された1945年8月6日に広島県三次市で生まれ、平和祈念の象徴として、1964年の東京五輪でやはり最終走者を担当した。

1964年の東京五輪で最終ランナーを務めたのは、広島県出身の坂井義則さん(Wikimedia Commonsより)
1964年の東京五輪で最終ランナーを務めたのは、広島県出身の坂井義則さん(Wikimedia Commonsより)

五輪史上初となる、2度目の点火台。広島から東京へ、そして東京から広島へ――思いをつなぐ炎が点った瞬間、会場は万雷の拍手に包まれた。

原爆ドームを望みつつマラソン

沿道からひときわ大きな歓声が上がった。8月23日、五輪のハイライトとなる男子マラソンだ。

原爆ドーム Atomic Bomb Dome
原爆ドーム Atomic Bomb Dome

上記の男性も、クラウドファンディングで寄付を行った1人だ。

「経済的な理由がきっかけとはいえ、大型スポンサーに頼った『商業五輪』とは違う、『クラウドファンディング五輪』をヒロシマが実現した意義は大きいと思う」

内村航平選手が有終の美

8月23日夜、広島県三原市。県東部に位置する人口10万人のこの街の駅前の一角には、特設の大型街頭ビジョンが設けられていた。2006年にデパートが撤退して以降、空き地となっている区画だ。市の中心部が14年も「遊んでいる」のは問題ではあるが、今回は格好のパブリックビューイング会場となった。

空き地が広がる三原駅前。写真は2012年のもの(Taisyoさん撮影、Wikimedia Commonsより)
空き地が広がる三原駅前。写真は2012年のもの(Taisyoさん撮影、Wikimedia Commonsより)

モニターには、ビッグアーチで行われている閉会式の様子が映し出されていた。集まった市民たちは、時に歓声を上げながらその模様を見守る。

広島空港の所在地であり、体操の会場が設けられた三原にも、五輪期間中多くの人が訪れた。特に、内村航平選手が年齢の壁を越えて見事金メダルを獲得したときには、多数の報道陣も詰めかけ、まさに町中がお祭り騒ぎとなった。

しかし、その五輪ももう終わる。

そうすれば、地元はまた山積する課題と向き合わなければいけない。駅前一等地の空き地が象徴する空洞化、進む人口減、財政問題――もちろんそれは、広島市含め他の自治体も同じだ。

それでも、五輪を「なしとげた」人々の表情は明るい。

モニターの向こうで、折り鶴をかたどった花火が上がる。盛大な拍手が、夜の駅前に響いた。

(※この記事は、幻に終わった2020年ヒロシマ・オリンピックをシミュレートしたフィクション記事です。広島市による2010年時点の構想などを元にしていますが、実在の人物、都市などには一切関係ありません)
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