新潟・村上市は、どうして「町屋再生」に成功できたのか?

2017年2月12日 11:00

町屋の中にこそ、本物があった!

昔ながらの町屋の外観を残す、村上市内の町並み(画像提供:むらかみ町屋再生プロジェクト)
昔ながらの町屋の外観を残す、村上市内の町並み(画像提供:むらかみ町屋再生プロジェクト)

村上市は、新潟県の最北部に位置する。かつては村上藩の城下町として栄えた。北限の茶どころとして知られ、三面川の鮭のほか、村上牛が特産品だ。

電話で答えてくれたのは、「むらかみ町屋再生プロジェクト」会長の吉川真嗣さんだ。村上伝統の鮭料理・鮭珍味を販売する老舗「きっかわ」の15代目である。

「村上は小さな城下町で、古い町並みが残る、あまり活気のないところでした。20年近く前のことになりますが、行政が商店街の近代化を打ち出したのです。そこで反対のために署名運動を始めたのが、そもそものきっかけでした」と吉川さんは話してくれた。「古い町並みを生かして活性化できないか、そう考えたのです」。

当時の商店はというと、町屋の外側にアーケードやシャッター、サッシなどを取り付けた、けっして魅力的とは言えない外観だった。「でも一歩中に入ると、吹き抜けがあり、大きな梁、大黒柱、神棚、仏壇、囲炉裏なども見え、古い町屋の生活空間が残っていて、まるでタイムスリップしたような感覚が味わえた。建物の中にこそ、本物があったのです」。

代々伝わる人形を展示し、観光客に披露する「町屋の人形さま巡り」(画像提供:むらかみ町屋再生プロジェクト)
代々伝わる人形を展示し、観光客に披露する「町屋の人形さま巡り」(画像提供:むらかみ町屋再生プロジェクト)

「そこで、まず町屋の生活空間を公開しようと考えました」と吉川さん。2000年に「町屋の人形さま巡り」、2001年には「町屋の屏風まつり」を企画し、町屋の内部を公開し、その暮らしを観光客に見てもらうことにした。すると、先祖代々伝わる雛人形や屏風を座敷に展示するイベントに、3万人を超える旅人が訪れたのだ。イベント開催中、現役を退いたお年寄りが元気に説明役を務めたことも、予想外の収穫だったという。

「人形さま巡りや屏風まつりといったイベントの時期だけでなく、通年、お客様に来ていただきたい。そのためには、町屋の外観を改修した方がいい、ということで、2004年、町屋再生プロジェクトが立ち上がりました」。1口3000円の年会費で、会員制による組織づくりに取り組んだ。

「全国各地にいる村上市出身者、村上を訪れた観光客に声をかけて、会員募集を開始しました。続々と集まった年会費を基金として、町屋の改修をスタートしたのです。第1号は、和菓子店の『早撰堂』でした」。

シャッターやサッシが付いていた、改修前の「早撰堂」(画像提供:むらかみ町屋再生プロジェクト)
シャッターやサッシが付いていた、改修前の「早撰堂」(画像提供:むらかみ町屋再生プロジェクト)

「早撰堂」の建物は明治時代のものだったが、通りに面した外側のアーケード、シャッターやサッシを外し、昔ながらの格子に取り換えた。屋根も瓦屋根にして、木製の看板を掲げ、すっかり大正時代風の外観に生まれ変わった。昔作っていた鮭の切り身を模した落雁も復活させ、販売するようになったという。

格子戸、瓦屋根、木製看板を取り付けた、改修後の「早撰堂」(画像提供:むらかみ町屋再生プロジェクト)
格子戸、瓦屋根、木製看板を取り付けた、改修後の「早撰堂」(画像提供:むらかみ町屋再生プロジェクト)

その後、町屋再生プロジェクトの基金を活用して、草木染めなどの技法を現代に生かす「山上染物店」、漆工芸・堆朱や民芸品を扱う「池田屋」、村上牛の専門料理店「江戸庄」など、次々と町屋の外観改修を行っていった。現在までになんと30近い改修事業を手がけている。

行政の補助を受けず、市民の力だけで......

改修後の「池田屋」。漆工芸・堆朱や民芸品が魅力(画像提供:むらかみ町屋再生プロジェクト)
改修後の「池田屋」。漆工芸・堆朱や民芸品が魅力(画像提供:むらかみ町屋再生プロジェクト)

「町屋再生のプロジェクトが進行するにつれ、テレビや新聞、雑誌といったマスコミの取材も増えました。結果的に、観光客も通年やって来るようになったのです」と吉川さん。今では会員の数も、述べ5000人を超えるという。

「会員には、近くの瀬波温泉に格安料金で泊まれるとか、市内の加盟店で使用できる1割引券(3000円分)といった特典を用意しました」。年会費分の元は取れるというわけだ。また会員にはリピーターになってもらいたい、という願いも込められている。

改修後の「益甚酒店」。地酒の品揃えが人気(画像提供:むらかみ町屋再生プロジェクト)
改修後の「益甚酒店」。地酒の品揃えが人気(画像提供:むらかみ町屋再生プロジェクト)

町屋再生プロジェクトの最近の事例について聞いてみた。

「市内に唯一残っていた鍛冶屋の店がありました。現在の持ち主は、鍛冶の仕事を続ける意思はなく、既に近くに住居を構えて引っ越していました。つまり鍛冶屋の店は空家同然、取り壊しの危機にあったのです」と吉川さんは語る。「そこで『鍛冶屋再生一万円運動』を起こして、全国から寄付を募り、改修することになりました」。

2014年、「孫惣刃物鍛冶」は完成し、先祖代々受け継いできた道具一式を店内に展示し、公開している。「ときには持ち主自身が店に現れ、古い道具について説明してくれることもあります」と吉川さん。町屋再生プロジェクトの中に、「空家再生」という事例が徐々に増えつつある。

町屋再生事業リーフレット(「むらかみ町屋再生プロジェクト」ウェブサイトより)
町屋再生事業リーフレット(「むらかみ町屋再生プロジェクト」ウェブサイトより)

今回、ユネスコから「プロジェクト未来遺産2016」として選定された理由として、「行政の補助を一切受けずに、市民から寄附を募り」、活動したことが挙げられている。そもそも行政が打ち出した近代化方針に反対する市民運動としてスタートしたので、当然と言えば当然だ。

「しかし現在では、行政の方針も変わったようです」と吉川さんは満足気に語る。町屋再生の成功が、ようやく行政からも認められてきたのだ。しかも行政が頭を悩ます空家対策にも貢献している。

さらに小中学校での講演をとおして、「次世代に町屋の価値とまちづくり活動を伝えている」ことも、大きく評価されている。「自分たちの町は、自分たちの力で良くする。子どもたちとってあたりまえのことなんですね」と吉川さん。「人形さま巡りのイベントにも積極的に参加してくれますよ」。

取材の最後に、今後の抱負を聞いてみた。吉川さんは、「もっとニッチな店、個性的な店を揃えていきたいですね」と答えてくれた。プロジェクトはまだまだこれからも続く。再生したのは、たんに建物の外観だけでなかったようだ。

なお「町屋の人形さま巡り」は3月1日から4月3日まで開催される。

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