宇宙はあの〝ジャスコ釧路店〟より近い!? 種子島にある案内板が話題「車で行けそう」「ロマンありすぎて涙出る」
とある交差点で撮影された写真が、SNS上を騒然とさせている。
それは、宇宙への案内板だった。
宇宙までは100キロほどの距離らしい。ただし、上空だが......。
こちらは、Xユーザーの「村木祐介_コスモさん」(@cosmo_muraki)さんが2024年5月25日に投稿した写真。
X上では3万を超える「いいね」(28日昼時点)のほか、こんな声が寄せられている。
「宇宙までの距離は東京から熱海までの直線距離くらいらしいです」
「たったの100キロなんだ。車で行けそう」
「宇宙って意外と近いんだな」
「ロマンありすぎて涙が出る」
かの有名な「ジャスコ釧路店まで直進110km」の看板と比べて「ジャスコより近い」というユーザーもいた。
いったいこの案内板は、どこに設置されていたのだろう? 宇宙とけっこう近い場所なのか? Jタウンネット記者は、投稿者に詳しい話を聞いてみた。
「すげーコスモってる!」
写真を投稿した村木祐介さんは、JAXAの宇宙エンジニアで、Sony-JAXA-東大の共創から生まれたプロジェクト「STAR SPHERE」のプロデューサーでもある。
JAXAでは人工衛星の仕事、「STAR SPHERE」プロジェクトでは人工衛星で宇宙から地球を撮影できる宇宙撮影体験など、宇宙を身近にする仕事をしているとのこと。
そんな村木さんが話題の写真を撮影したのは、鹿児島県の種子島、南種子町上中の交差点だった。
6月30日、種子島からH3ロケット3号機で打ち上げ予定の地球観測衛星「だいち4号」。村木さんはそれを見に行くために、出張で種子島を訪れていた。
20年ぶりの訪問ということもあり、看板の存在は知らなかったという。
「出張で近くの旅館に泊まっていたのですが、一緒に行った友人(アメリカ人)がこれを発見して、すごい面白いのがあるぞ、と仲間みんなで見に行きました。5月25日(土)の朝のことです」
「『すげーコスモってる! さすが種子島! 宇宙が身近で、遊び心が素敵だな』と思いました」(村木祐介さん)
南種子町にある種子島宇宙センターは、日本最大のロケット発射場であり、「世界一美しいロケット発射場」とも言われている。
豊かな自然に恵まれた美しい場所で、日々の暮らしの中で宇宙を身近に感じられるということで、村木さんも感動したそうだ。
ちなみに、「コスモってる」というのは、村木さんが出演しているYouTube番組「コスモさんの宇宙ワクワク感動教室」の中で、宇宙を感じて心動いた時に使うワードらしい。
確かに「今いる場所の100キロ先は宇宙だ」という案内は、かなり宇宙を感じる。読者の皆さんも写真を見て、コスモったに違いない。
宇宙への発着点にしたい
ところで宇宙への案内板が設置されたのは、いつ? どんな経緯で?
Jタウンネット記者は、南種子町役場に電話で問い合わせてみた。取材に応じたのは、企画課観光経済係の担当者だった。
担当者によると、案内板設置のきっかけになったのは、2023年12月に開催された「種子島宇宙芸術祭ライトフェスティバル」。「自然×宇宙×アートの融合」をテーマにしたアートフェスティバルだ。
企画に参加した世界的ライトアーティスト・千田泰広氏の発案で、宇宙への案内板を作ることになったという。
宇宙まで100キロというのは、国際航空連盟(Federation Aeronautique Internationale: FAI)という組織が、大気がほとんど無くなる高度100キロから上を宇宙と定義しているからだ。
ただ、村木さんの投稿までの間は......。
「千田さんのアイデアを基に、『宇宙への発着点にしたい』というコンセプトで、南種子町で案内板を製作し、設置にこぎつけたのですが、実は今までとくに反響はないまま......」(同担当者)
ちょっと寂しい感じだったようだ。
もしかしたら、南種子町に住む皆さんにとって宇宙はとても身近で、この町が宇宙への発着点であることも、当然なのかもしれない。だとしたら、「当たり前のこと」とスルーしてしまうのも無理はない。
ところが、村木さんの投稿によって町外に発信されると、話題は爆発的に広がった。
担当者は少し驚いたと同時に、内心ホッとしたという。
繰り返しになるが、地球観測衛星「だいち4号」搭載のH3ロケット3号機は6月30日に打ち上げの予定。
「宇宙への発着点」と、飛び立つロケットを見るために、種子島に旅してみてはいかがだろう。