「想像の斜め上をいく」「幻でも見てるのかと」 衝撃的すぎた「銚子電鉄×夢グループ」コラボ成立の発端とは【エピソード1:極寒の網走編】
2023年9月20日、ネット上をザワつかせたあのニュースを、皆さんは覚えているだろうか。
ぬれ煎餅でおなじみの鉄道会社(帝国データバンク上では「業種:米菓製造」)・銚子電鉄と、「でーぶいでー」でおなじみの通販会社・夢グループのコラボが発表された、あの日である。
銚子電鉄のXアカウント(@choden_inubou)が、夢グループの石田重廣社長&歌手・保科有里さんのコンビを起用したYouTube動画のリンクを公開。さらに22日に車両のヘッドマーク写真を投稿すると、SNS上では困惑するユーザーが続出。
「コレは...こんなん反則やろ(笑) ここを攻めてくる銚子電鉄さん恐るべし」
「想像の斜め上をいくコラボ」
「ヘッドマークがこれなの幻でも見てるのかと思ったわね...」
などといった感想が寄せられた。
ユニークな取り組みや、他では見られない個性で人気の2社は、どのように出会ったのか。銚子電鉄と夢グループ、そしてJタウンネットだけが知るその裏側を皆さんにもお伝えしよう。
課長の独白......構想は網走で発案?
2社のコラボが発表された6日後の9月26日。Jタウンネット記者の元に1通のメールが届く。
銚子電鉄・食品事業部の担当課長からだった。メールには、こんなタイトルのワードファイルが添付されていた。
「夢から覚めた夢」(32KB)
文字数5271文字。そこに記されていたのは、コラボ実現までの"裏話"。
なぜ担当課長(以下、A氏と呼ぶ)が記者にそれを送ってきたのかは続稿に譲るが、とにかくそれは、こんな書き出しで始まっていた。
時は数年前に遡る。
真冬の網走、最高気温−5度。
記者はまず思った。いや、なんで網走?
あなたの働く銚子鉄道は千葉だし、コラボ先の夢グループは東京の会社なのに。
読み進めれば、その謎も解けるのかもしれない。そう思って先に進むと、A氏は流氷を見に行き、街の寿司屋に入っていく。カウンターで地酒と北の海の幸を楽しみ、贅沢な時間を過ごしたそうだ。
そして、感じの良い大将が、日焼けしたホタテ漁師と話し込んでいる時、ふと目に入ったテレビで流れていた映像に、彼の目は釘付けになった。
網走で知った全国展開
流れていたのは、テレビCMだった。店内の喧騒で音声は聞こえない。しかし、A氏の心が、CMの音声を自動再生していた。
「ポータブルプレーヤー」「シーデー、デーブイデー」「やすいっ! やすぅ~い♡」
夢グループの「夢ポータブル多機能プレーヤー」のCMだった。それに気づいたA氏は思わず、口に出していたという。
「全国的ぢゃないか!!」(原文ママ)
A氏は、あのCMが関東ローカルで放映されているものだと思い込んでいたという。その理由について彼は、「その何とも言えない独特の世界観。取り扱う商品の親しみやすさ。そして何より耳に残る独特の語り口と掛け合い、あまりに斬新な構成と、平成から令和の物とは思えない圧倒的昭和感」を挙げていた。
A氏は夢グループのCMが全国区であると知り、「無知な自分を恥じた」。その時、一瞬、店内の喧騒が収まった。脳内再生だったCMの音声が、A氏の鼓膜を震わす。
いつもの石田社長のあの声で「おひとり様2台までです」という声が聞こえてきた。私には石田社長に「夢グループの全国展開を知らないのはあなたおひとり様です」と言われた気がした。
網走でのこの出会いが、数年後、話題のコラボに繋がることになる。当時のA氏はそんなこと、知る由もないのだが......。
エピソード2へつづく――。