「飲み会に行った娘からの電話に出たら『お母さん、ごめんなさい』。聞こえてきたのは知らない声で...」(東京都・50代女性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Hさん(東京都・50代女性)
その日、Hさんの娘は職場の同期と飲み会に出かけていた。
夜も遅くなり、布団に入って眠ろうとしていたHさんの元に、そんな娘から着信が。しかし、電話から聞こえてきた声は娘のものではなく......。
<Hさんの体験談>
見ず知らずの人に娘が助けられた話です。コロナの波が落ち着いてきたひととき、娘は久しぶりに職場の同期と集まりました。
このコロナ禍は本当にストレスフルな日々だったこともあってか、その日は一次会、二次会と進んで、みんなで日頃の愚痴を語り合う、お喋りのつきない女子会に。
普段、お酒に強くて酔った人を介抱する側の娘も、その日は随分と深酒をしてしまい......。
娘の声じゃない!
私が布団に入ってうとうとしていたところ、娘から電話がかかってきました。
「もしもし、何? もうお母さん寝てるんだけど」
そんな不愛想な対応をした私に返事をしたのは、娘ではありませんでした。知らない女の人の声が聞こえてきたのです。
えっ? 何? どういうこと? 私は一気に目が覚めて、慌てて布団から飛び起きました。
声の主は、娘が渋谷から京王井の頭線に乗った途端にバタンと倒れたのを見て、このままではとても家に辿り着けないと思い、保護してくれたのだそう。
とても明るい、ハキハキとした大人の女性という感じの声で、その人はこう仰いました。
「お母さんごめんなさい。びっくりしましたよね。娘さん、電車乗るなり倒れちゃって。きっと楽しいお酒だったんですよ。怒らないであげてくださいね。私も若かりしころ、同じことありましたから!」
さらに、1人じゃ電車を降りることもままならなそうな娘を、タクシーに乗せてくれると言うのです。
「タクシー乗る時、また連絡しますので、お母さん住所、タクシーの運転手さんに伝えてもらっていいですか?娘さんは言えそうもないので」
その横からは、「大丈夫ー!帰れまーす!アハハ~」なんて娘の声が聞こえてきました。まさにへべれけ......。ぐでんぐでんな様子が伝わってきました。
「本当に救われた思いで安心しました」
「申し訳ありません! 本当にご迷惑おかけして......。ご親切にありがとうございます。お礼をしたいので、ご連絡先よければ教えて頂けますか?」
私はひたすら恐縮してそう言ったのですが、彼女は「いえいえ、いいんですよ。気にしないでください」と......。せめて、と粘って何とか「K(仮名)と申します」お名前だけうかがうことができました。電話の向こうの快活で明るい声に、素敵な女性を想像しました。
酔って意識朦朧の娘など、そのまま変な人に連れて行かれてもおかしくない世の中です。でも、その方は帰宅途中にわざわざ途中下車をして、娘をタクシーに乗せてくれた。電話に出た時はドキドキしましたが、本当に救われた思いで安心しました。
その後は自宅前で娘が乗ってくるタクシーを待ち構え、運転手さんにも謝罪と感謝を伝え、そしてやっとの思いで娘を引っ張りだしました。娘には何を聞いても要領を得ず、やれやれな一晩でした。
そして翌朝、素面に戻った娘に聞くと、何も覚えていないというのです。電車に乗ったところまでは何となく覚えているけれど、テキーラを何杯飲んだか、どうやってお金を払ったのかは......。一緒に飲んでいた友達もみんな、覚えてないとのこと。若いって、怖い物知らず過ぎるでしょー!
そんな娘を「若い頃の自分も同じだったので」と助けてくれたなんて......! 私自身同じ立場ならできるだろうかと考えさせられました。
Kさん、本当にありがとうございました!親として感謝と敬服の気持ちでいっぱいです。いつの日か井の頭線で娘を見かけたら、声をかけてくださいね!
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな、あの時自分を助けてくれた・親切にしてくれた人に伝えたい「ありがとう」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
Jタウンネットでは読者の皆様の「『ありがとう』と伝えたいエピソード」を募集している。
読者投稿フォームもしくは公式ツイッター(@jtown_net)のダイレクトメッセージ、メール(toko@j-town.net)から、具体的な内容(どんな風に親切にしてもらったのか、どんなことで助かったのかなど、500文字程度~)、体験の時期・場所、あなたの住んでいる都道府県、年齢(20代、30代など大まかで結構です)、性別を明記してお送りください。秘密は厳守いたします。
(※本コラムでは、プライバシー配慮などのため、いただいた体験談を編集して掲載しています。あらかじめご了承ください)