新婚旅行へ向かう特急で車内放送「至急車掌室へおいで下さい」 そこで手渡されたのは「給料」で...
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Tさん(神奈川県・70代以上男性)
Tさんが新婚旅行に行ったのは、昭和40年代のことだった。
結婚式を終えた直後、目的地に向かう列車に乗った夫妻。するとほどなくして、車内放送で名前を呼ばれて......。
<Tさんの体験談>
今から半世紀以上前、昭和40年代に新婚旅行へと出かけたときの出来事です。
当時、新婚旅行といえば式の直後。駅のホームに新婚夫婦の友人や親戚が集まり、バンザイの声を掛けながら送り出すという光景は珍しくありませんでした。
私たちも、式の後すぐに駅に向かいました。そして乗った列車の中での出来事が、忘れられないエピソードとして脳裏に焼き付いています。
車内放送で車掌に呼ばれ...
式を終えた後、私たちが慌ただしく向かったのは上野駅。当時の新婚旅行といえば南紀白浜や九州・宮崎がブームで、大半の人の想い出の地となっていたであろうと思います。しかし私たちはブームに逆らい、東北方面へ行くことにしたのです。
余裕のない行程で間に合うかどうかの瀬戸際でしたが、なんとか発車寸前の列車に乗り込むことができました。
席に着いてやれやれと安堵したのも束の間。発車してから間もなく車内放送が始まり、最後の方で「〇〇会社の△△様、至急車掌室へおいでください」と2回呼ばれました。私のことでした。
そこで車掌室へ向かうと、車掌さんから分厚い封筒を渡されました。
「今日はおめでとうございます。
これは貴方の友人から絶対に渡して下さい、とお預かりしたものですのでお渡しします」
同時にそう言われたので、最初は「国鉄さんも粋な計らいをするもんだな?新婚さんにお祝い品でも出るようにしたのかな」と、ひとり合点。ところが席に戻り、封筒を開けたところ、中から出てきたのは自分の給料袋でした。
前代未聞の出来事?
当時勤めていた会社の給料は12日に基本給、22日に残業代と住宅手当等がそれぞれ現金で手渡されるというものでした。式当日はちょうど22日で、気を利かせた友人が私の給料を持ってきてくれたのです。
後でその友人から聞いた話によると、駅で見送りに来る途中でアクシデントが起こったそうです。自分で手渡しするのは間に合わないと判断した彼は、出発のサイレンが鳴る中、無理を承知で車掌さんに「新婚旅行に行く友人に給料を渡したいのでお願いできないでしょうかと」と直談判。すると車掌さんは
「当然小遣いも足らなくなるだろうから、任せなさい、絶対にお渡ししますよ」
と快く引き受けてくれたそうです。当時の国鉄の特急列車の車掌さんから自分の給料を渡されたなんて前代未聞の出来事だったのではないかと思います。
粋な計らいで旅行中の懐に余裕が出来たのも当然、お土産もちょっと奮発出来ました。
車掌さんに感謝、感謝。
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