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うち50 ヘルツだけど、お隣さん60 ヘルツ? 2種類の電気が「混在」する村が存在した

松葉 純一

松葉 純一

2022.10.20 08:00
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「一つの村の中で50 Hzと60 Hzが混在する地域がある」その謎を解明すべく我々は日本の奥地へ向かった。

2022年9月8日、そんなつぶやきがツイッターに投稿され注目を集めた。

皆さんご存じの通り、日本の家庭に供給される電気の周波数は地域によって違う。富士山と糸魚川あたりを境に、東側には50ヘルツ、西側には60ヘルツの電気が送られているので、越境して引っ越す際には使っている家電がその後も使い続けられるか、チェックする必要がある。

それが「一つの村」という小さな範囲の中で混在しているとは......?

まずは話題の投稿をご覧いただこう。

デカデカと電柱に記された「50 Hzと60 Hzの表示」。2本の電柱は、ほぼ隣り合っているという。

これらの写真が撮影されたのは、長野県北端に位置する栄村。新潟県・群馬県と隣接する小さな村だ。

ツイッターユーザー「dydt」(@dydt_Nao)さんが投稿したツイートには、2万8000件を超える「いいね」のほか、こんな声が寄せられている。

「オーディオマニアがうちの電柱のが音が良いてマウント取り合いしそう」
「この付近の家電屋には50Hzと60Hzの両方売ってるんかな」
「必ずどこかにできるだろうとは思ってたが、最前線はこうなっているらしい。電気の世界は複雑怪奇だね」

Jタウンネット記者は、まず投稿者「dydt」さんが栄村を訪れた時の状況について聞いてみた。

数100メートルしか離れていない集落の間で...

投稿者「dydt」さんによると、撮影したのは、9月8日だった。このあたりの状況は「なんとなく噂で聞いていた」そうで、実態を調査すべく長野県と新潟県の県境沿いの道を電柱に注意しながら進んでいたという。

「ある集落を過ぎたところで50ヘルツの記載がある電柱を見つけ、2、3本の電柱を経てその次の集落入り口の電柱で60ヘルツの記載を見つけました。記載があるのは境界付近の電柱だけのようです。その辺りをうろうろして電線の状態などを調べました」(dydtさん)
「dydt」(@dydt_Nao)さんのツイートより
「dydt」(@dydt_Nao)さんのツイートより

2本の電柱を見つけたときは「本当に実在した!」と感動。経年で劣化で消えてしまいがちなペイントだったため、「判別できる状態であって良かったと思いました」。

「なんとなく東日本と西日本や、電力会社の管轄する県単位で分かれていると、みんな思い込んでいると思います。同じ市町村の中、今回調査してみて、それがしかも数100メートル隔てた集落間(いわばちょっとしたお隣さん)で50/60ヘルツの境界があるというのが面白いと思いました」(「dydt」さん)

学生時代に電気を勉強していた「dydt」さんは、「電力黎明期の歴史的経緯などに興味を持っていた」というが、やはり実際に現地を見た印象は強烈だったようだ。

周波数の混在は、いったいどういう仕組みになっているのか? 次に、Jタウンネット記者は、中部電力パワーグリッドに電話で聞いた。

周波数混合地域ならではの注意点も

取材に応じたのは、中部電力パワーグリッド長野支社広報担当者だった。

「家庭用の電気は、交流といって電気の流れる方向が1秒間に何十回も変化しています。この流れの変わる回数を周波数(Hz:ヘルツ)といいます。日本は静岡県の富士川と新潟県の糸魚川あたりを境にして、東側は50ヘルツ、西側は60ヘルツの電気が送られています」

なぜ東西で周波数の違いが生まれたのかと言うと、明治時代に輸入された発電機の違いによる。関東ではドイツから50ヘルツのもの、関西ではアメリカから60ヘルツのものを取り入れて各地域の電力事業は発達してきた。全国で統一することは難しく、現在も当時の流れをくむ形で、2つの周波数が存在しているのだ。

そして周波数の境界周辺の地域では、長野県栄村のように一部地域で50ヘルツの電気が供給されている場合がある。

担当者によると、ここにある50ヘルツの電柱も60ヘルツの電柱も中部電力の管轄。60ヘルツの電力は中部電力内で作られているもので、50ヘルツの電気は、東北電力からの融通を受けているものだという。周波数混合地域には、その土地ならではの歴史や文化、経済などの諸事情が影響ありそうだ。

なお、栄村以外では、飯山市、小谷村、佐久市の一部にも、周波数混合地域が存在する。

「dydt」(@dydt_Nao)さんのツイートより
「dydt」(@dydt_Nao)さんのツイートより

dydtさんの投稿のように50ヘルツの電柱と60ヘルツの電柱が近くにある場合は、保守点検にも気を使う必要がある。

なぜなら見た目は同じようでも、設備が全く異なるからだ。接続しないように注意を払っていると担当者は語る。

また、周波数混合地域に移住してくる人に向けては、使用する電気製品が自分の使う周波数に対応しているか確認するように促しているとのことだ。

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