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田舎暮らしの概念が変わるかも?鳥取県湯梨浜町のカルチャー探訪録

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人類が滅んだ後も残り続けそう... 100万枚のレコードを集めた施設のロマンが凄い

松葉 純一

松葉 純一

2022.07.28 20:00
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読者の皆さんは、音楽を聞くときに何を使っているだろうか。

もう最近はストリーミングかダウンロードばかり、という人も多いかもしれない。充電されたスマホとネット環境さえあれば、すぐに新しい音楽と出会えるなんて、便利な時代だ。

でも、もし人類が滅んでしまったら......この世に残る音楽はやはり、「あの形」に違いない。

――2022年7月3日、ツイッター上に次のような動画が投稿された。

北海道の日高振興局沿岸中部に位置する新冠(にいかっぷ)町にある、「レ・コード館」を訪れた投稿者「太刀川るい」(@R_Tachigawa)さんが、ツイッターに投稿したものだ。館内には、クラリネット奏者ジョージ・ルイスの音楽が響いている。そして途中で登場するジュークボックスからは、ルイ・アームストロングの「このすばらしき世界」が。1960年代の名曲である。

「人類が滅んだ後に音楽を残すために作られた施設っぽさが凄くて大満足」

と呟く太刀川さん。この施設「レ・コード館」はどんな場所で、何を目的に作られたのだろう?

21世紀に生きる子供たちのために

Jタウンネット記者の取材に応じた太刀川るいさんによると、「レ・コード館」を訪れたのは、22年7月3日。

「存在自体は知っていましたが、なんとなく近くに立ち寄ったので......、ふらりとエントランスに入ったら誰もいなくて、その空間がすごいキレイだったので思わず撮影しました」(太刀川さん)

「館内の案内板に書いてあったと思うのですが、『レコードが好きな町民がいて、そのまま作ってしまった』そうです」とのこと。

そこでJタウンネット記者は、新冠町社会教育課に取材することに。新冠町教育委員会社会教育課の担当者が、質問に答えてくれた。

レ・コード館交流の広場(画像提供:新冠町社会教育課)
レ・コード館交流の広場(画像提供:新冠町社会教育課)

新冠町では「レ・コードと音楽のまちづくり」をコンセプトにまちづくりに取り組んでいる。

担当者によると、事業のきっかけになったのは町内の音楽愛好家のグループ「一枚のレコード」のこんな思いだったという。

『レコードをこのままにしておくと散逸してしまい貴重な歴史的価値のある音楽文化が間違いなく消滅する。 今、消え去ろうとしているレコードを世界的規模で集めて町づくりができたら、きっと文化の香りの高い町が造られるだろう。 それは21世紀に生きる子供たちのためにもすばらしいだろう』

音楽愛好家達の発想が生まれたのは、1989年(平成元年)ころ。竹下内閣により「ふるさと創生事業」として、全国の地方自治体に1億円が配分された時期だった。

「新冠町をレコードのメッカとする」という彼らの考えは行政により取り上げられ、「レコードと音楽のまちづくり事業」として進められることになる。91年度には国土庁の「過疎地域活性化推進モデル事業」に指定され、97年に「レ・コード館」が開館した。

レ・コード館ミュージアム(画像提供:新冠町社会教育課)
レ・コード館ミュージアム(画像提供:新冠町社会教育課)
「RECORDのRE(レ)には『再び』、CORD(コード)はラテン語で『心』と言う意味があります。この様な意味合いから『レ・コード』と表記し『わすれかけている大切なものに帰ろう』とか『心の記憶を呼び覚ます』というような意味を持たせています。 従って、『レ・コードと音楽によるまちづくり事業』とは、単にレコードを収集することを目的にするのではなく『人々の思い出や心』を新冠に集めようとする町づくりです」(新冠町教育委員会社会教育課の担当者)

全国から寄贈されたレコード100万枚

レ・コード館外観(画像提供:新冠町社会教育課)
レ・コード館外観(画像提供:新冠町社会教育課)

この事業の中で、町は91年からレコードの収集を開始。同館のFacebookによると、レ・コード館の開館20周年にあたる2017年の5月に目標としていた100万枚に到達した。

「レコードは全て、全国から寄贈されたレコードです。各地域のラジオ局などから大口の寄贈もありますが、全国から約4300名の方々より寄贈いただいております。 寄贈されたレコードはデータベースに登録し、曲目・アーティストはもちろん、クラシックやジャズでは演奏家別に探し出すこともできます。 また、寄贈者別にもデータ管理をおこなっているので、自分が大切にしていたレコードにも再会することができます」(新冠町教育委員会社会教育課の担当者)

ちなみにツイートで紹介されたジュークボックスは、故障により数年間運転していなかったが、修理を行い、22年の4月から再始動したばかり。大変好評で、数多くの来館者に利用されているという。

担当者は、「当館では、リクエストした曲を国内最大級といわれるオールホーンスピーカーで聴くことができるレ・コードホールなどもありますので、皆さまのご来館を心よりお待ちしております」とコメントした。

レ・コードホール(画像提供:新冠町社会教育課)
レ・コードホール(画像提供:新冠町社会教育課)

エントランスや重複保存されているレコードを聞ける「レ・コードプラザ」は入場無料。レ・コードホールのある「観光有料エリア」は大人300円(高校生200円、小中学生100円、乳幼児無料)で見学できる。事前に予約すれば、レ・コードホールは17時以降に1時間3700円(以降30分1200円)で貸切も可能だという。

音楽の世界に浸りたい――そんな時には、ぴったりの場所だろう。

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