三叉路のド真ん中に鎮座する「石塔」のミステリー なぜこの場所に?なぜ退かさない?謎に包まれた「正体」を突き止める
もし、車で走っている時、道のド真ん中になにかがあったらかなり邪魔だ。
そんな障害物は一刻も早く退かしてもらいたい――のだが、そう簡単に取り除けない場合も世の中にはあるらしい。
こちらはツイッターユーザーの「宗教建築が好きなアライさん(宗建イ)」(@araisan_syukyo)さんが2022年5月19日に投稿した1枚。
住宅街であるため詳細な場所は控えるが、神奈川・横浜市瀬谷区内で撮影されたものだ。写真には、神様を祀っている地神塔(じじんとう)らしき石塔が見えるが、風化が進んでいて、そもそも何の塔なのかは正確に読み取れない。
ただ、注目したいのが設置されている場所。なんと、三叉路のど真ん中にあるのだ。
この投稿にはツイッター上で約1万5000件のリツイート、約6万1000件のいいね(6月14日17時時点)が寄せられるなど、注目を集めている。
区役所でも詳しい経緯は把握していなかった
そしてツイッター上ではこんな疑問の声もあがっている。
「これは何をするところなのだ?」
「そもそもこれってなんなんだ?」
確かに三叉路のど真ん中、交通の妨げになりそうな場所にある石塔が何なのか、何のために存在しているのか気になるところだ。
そこで5月25日、Jタウンネット記者は瀬谷区地域振興課の担当者に話を聞いてみたが、詳しいことは把握していないという。また、同日に道路の維持管理を行う横浜市の瀬谷土木事務所の職員にも話を聞いたが、
「石塔の周囲にポールを設置しているので、歴史あるもので大切に保存しているのでは」
との回答があったのみで有力な手掛かりは得られなかった。
区役所でも把握していない石塔。筆者はその正体を知るため、瀬谷区役所を通じて石塔がある地域の橋戸北自治会の会長に取材を依頼。会長も塔の正体を把握していなかったが、地域の長老たちに話を聞いてもらえることになった。
三叉路にある意味も......
そして6月10日、自治会長から筆者の元に1本の電話がかかってきた。
「地域に住む90代の方の話だと、あの石塔は家畜の墓だと代々聞いているそうです。場所もずっと変わっていないといいます」
長老の話によると、かつてはあの石塔の下に牛や羊といった家畜を埋めて供養を行っていたという。また、子供の頃に別の場所で実際に家畜を埋めて供養した経験もあるそうだ。
さらに、その長老は家畜の墓を建てる場所についても、こんな話をしていたという。
「家畜を供養する墓は道が交わる場所でないといけなかったそうです。今回の場所もまさに三叉路ですから、建てる場所としての要件を満たしています」(自治会長)
なんと、三叉路に設置されている意味までちゃんとあったのだ。
自治会長も今回の取材で初めて石塔の真相を知ったそう。ただ、石塔はかねてから地域では大事にされていて、現在でもどんど焼きを行う際はここから種火を取っているのだとか。
今回の調査で改めて明らかになった塔の役割と、そこにある意味。これからも、地域の人々が大切に守っていくことだろう。