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「すごく耽美」「小説の舞台になりそう」 熊本の山奥にひっそり佇む「白昼夢のような館」の正体は...

松葉 純一

松葉 純一

2022.06.13 08:00
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すべてのドームを見られる場所は、一か所だけ

そして選ばれたのが、球磨川を一望できる急な斜面。そこに作られる館の建築家に木島安史氏を推挙したのも泉氏だったという。

「木島先生は当時、小さいながらも秀逸な建築を手がけていた若手の建築家でした。現地を訪れた木島先生は、手帳をひろげ万年筆でスラスラとイメージをスケッチされました。
みな、そのスケッチに魅了されました。そのスケッチが原型となり『森林館』が誕生しました」(球磨村森林組合担当者)

平地の少ない山村に、地盤の確かな急な斜面を利用して建てられた森林館は、「現代の清水の舞台ともいえる構造」であると担当者。深い谷底の美しい水の流れから高い山頂まで、一望に収めることができるという。

特徴的なドームは全部で7つ。しかし、互いに重なりあっているため、見る場所によって4つに見えたり、5つに見えたりする。すべてを見られる場所は1か所しかないという。これらは「周囲の山々のたたずまいをみださないよう、つつましく建っています」。

また、コンクリートの壁にはスギの年輪が刻まれ、床や窓には国産の木材がふんだんに使われている。縦長の窓から球磨川の流れから山の頂きを見ると「切り抜かれた水墨画に包まれるよう」な感覚を覚えるそうだ。

「内に入ると空間はおおきくふくらみ、中の営みを夢多いものにしてくれます。
木島先生は、このドームを『童夢』と称していました」(球磨村森林組合担当者)

1984年に竣工した森林館は、1985年に日本建築学会賞(作品賞)を受賞したという。

球磨川(写真はJタウンネット記者撮影)
球磨川(写真はJタウンネット記者撮影)

森林館は、2012年7月の豪雨災害により被災し休館。2020年7月豪雨災害により再び被災した。現在、館内に堆積した土砂を撤去し、今後の再生に向け業者と協議中だという。

今回森林館がSNS上で話題になったことに対しては、「構築物(建築物)としても大変貴重なものなので、ぜひ再開したいと思い今取り組んでいます。現在は、周辺がまだ、災害からの復興中で危険なところも多く、まだ工事中なので、再開の目途がたってから森林館に足を運んでいただきたい。ただし、球泉洞は再開しているので、森林館を外から眺めることは可能です」とコメント。2023年度の再開を予定しているそうだ。

外観だけでも見てみたいという人は、足を運んでみてもいいだろう。

ただ、周辺の道路も工事中のところが多いので、くれぐれも気を付けて。

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