「25年通った美容院の店主に、言えなかった『当分行けません』。癌治療をはじめウィッグになった私は...」(東京都・50代女性)
いい話を聞かせてくれるオシャレなマスターだった
私の髪の毛は硬くて、クセ毛でカットがしにくい。その上、量も多くて、パーマがかかりにくい美容師泣かせなものでした。だから、どこの美容院に行っても思った通りにならず悩んでいました。
「カットが上手いマスターがいるよ」と、姉が行きつけの美容院を勧めてくれたのは、私が25歳のとき。
地下鉄丸の内線・新中野駅の鍋屋横丁にある店で、私は2か月に1度のペースでそこに通うようになりました。
マスターはおしゃれな人で、「来てくれると、不思議にその日はお客様が多くなるよ」なんて言ってくれて、私はずっとこのお店に通い続けるのだと思っていました。
でも50歳のとき、癌が見つかったのです。私は、抗がん剤治療を受けることになりました。
始めたら髪の毛は抜けていき、当分美容院には行けません。だから、その前に私は美容院へ向かいました。
偶然にもお客は私だけ。いつものようにカットされている間、いつ病気の話をマスターにしようかとそればかり考えていました。
でも、告知をされて間もなかった私は結局、切り出すことができなかったのです。