「兄とはぐれ、所持金もなく、歩き続けて約5時間。停留所で座り込んだ小学生の私に、バスの運転手が...」(宮城県・40代男性)
「いくら歩いても、実際の景色は変わらない」
兄を探しているうちにデパートの外に出た私は「どっかで見た道......」と感じました。母とのルートセールスで記憶に残っていた道だったのです。
私は「帰れる」と確信し、軽ワゴン車に乗っているかのごとく、その道を自宅に向かって歩き出しました。
兄はその頃、自宅の両親に電話したり、デパートで迷子の呼び出しをしていたりしたそうですが、もう見つかるはずもありません。
小学2年生の小さな歩幅ですから、いくら歩いても、記憶の中の景色ほど、実際の景色は変わりません。時間が経過するにつれて、私も不安になり始めました。ただ運悪く、お金は1円も持ち合わせがなく、おやつの1個すら持っていませんでした。
いつの間にか「家に電話しなきゃ」という思いから、道すがらの自動販売機のつり銭口に1つ1つ手を入れて、10円玉を探し始めました。しかし、1枚も見つかりません。
そうこうしているうちに日はすっかりと暮れ、さすがに疲れ、どこかのバス停で座り込んでしまいました。後から聞くと、5時間近く、20数キロは歩いていました。