「いきなり服を脱ぎ、フンドシ一丁で池に飛び込んだ見知らぬおじさん。あの人がいなければ今、私は...」(兵庫県・70代女性)
子供のころ、川や池に水遊びに行ったことがある人は少なくないだろう。
中には、遊んでいる最中に水に足をとられて転んだり、深みにハマって動けなくなったりした、なんて人もいるかもしれない。
兵庫県在住のJタウンネット読者・Hさん(70代女性)も、小さいころに家の近所の池でそんなピンチを体験した。
それはHさんがまだ4歳だった時のこと。2人の兄と一緒に近所の池に遊びに行った彼女は、ふとした拍子に池にハマってしまった。
――このままでは溺れてしまう!
池の底に足のつかない状態で、彼女が必死にもがいていると......。
おじさんがいきなり服を脱いで...
私が幼い時に助けて下さった命の恩人を、75歳となった今も忘れません。
私は4歳で、魚釣りに行く8歳と10歳の兄2人について近所の池に行っていました。
兄たちが釣りをしている間は池の土手に座ってたのですが、どうかした拍子にずるずると滑って池にはまってしまったのです。池の底に足はつかず、私は必死にもがいていました。
すると、その時です。丁度通りがかった見知らぬおじさんが、いきなり服を脱いで褌一丁になって水に飛び込み、私を岸へと引き上げてくれました。
私はぐったりとはしていましたが、彼が助けてくれたおかげで少し水を飲んだだけで大事に至らず、すぐにショックから立ち直り元気を取り戻しました。
私の事故に動転した兄たちは、泣きながらおじさんにお礼を言ったものの、当時は子どもだったため、どこのどなたかを訊くこともできませんでした。そんな私たちに、おじさんは
「気をつけてな!」
と一言いって素早く服を着てすぐに立ち去りました。
あれから71年たった今も...
その後、ずぶ濡れで帰宅した私を見た母は驚いて兄たちに訳を尋ねましたが、兄たちは叱られるのを恐れて、「水遊びしたから」などと母に報告しました。
本当のことを母に打ち明けたのは、それから10年後。
あの時私は死んでいたかも知れないと知って、母は驚き、また、娘の命を救ってくれた見知らぬ男性の恩に涙しました。
あれから71年たった今も、私の頭にはあの時の水を飲んだ苦しさや、助けてくれた褌姿のおじさんが動画のように張り付いていて、時々蘇ります。
私はその後、勉学、青春、就職、結婚を経て、また阪神淡路大震災で被災するなど、人生悲喜こもごもでした。耐え難いほどの辛さや苦しさもありましたが、人の心の優しさや深さに触れて喜びを感じることも多く、穏やかな晩年を迎えた今、「生きてきて良かった。楽しい人生だった」と実感しています。
だからいっそう、71年前のあの時に命を救われたことを感謝せずにはいられません。
年齢差から想像すると、あのおじさんはもうこの世に居ないかもしれません。地上か天国かにおられる彼に、「ありがとう!」の声が届きますように。
思うに、人は誰かによって助けられ、あるいは助けて、お互いに小さな奇跡を積み重ねることで、希望に向かって生きることが出来るのでしょう。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな、あの時自分を助けてくれた・親切にしてくれた人に伝えたい「ありがとう」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
Jタウンネットでは読者の皆様の「『ありがとう』と伝えたいエピソード」を募集している。
読者投稿フォームもしくは公式ツイッター(@jtown_net)のダイレクトメッセージ、メール(toko@j-town.net)から、エピソードを体験した時期・場所、具体的な内容(どんな風に親切にしてもらったのか、どんなことで助かったのかなど、500文字程度~)、あなたの住んでいる都道府県、年齢(20代、30代など大まかで結構です)、性別、職業を明記してお送りください。秘密は厳守いたします。