広島でなら、挑戦できる コロナ禍の課題解決へ...「アイデアの卵」大集結の舞台裏
サンドボックス賞に輝いた「あしらせ」が秘める可能性とは?
「どうニューノーマルを過ごしていくのか――これがいま、必要不可欠な課題になっていると思います。そこで(今回)、デジタル技術を活用した、ニューノーマル時代のさまざまな課題解決の案を募集しました」
「これらのアイデアが実際に社会でどう生かされるか。半年間の実証を経て、常識を再定義するようなソリューションか、見ていただければと思います」
これは、番組の開始直後の、広島県知事・湯崎英彦さんの言葉だ。
そして、ソリューションの伝え手として抜擢されたのが、地元タレントの中島尚樹さんと井上恵津子さん。2人がレポーターとなって、30アイデアのうち17件について、県内の実証地に足を運び、ときには実際に体験してみる「体当たり」で伝えてくれた。
残りの13件も、事前収録したVTRや関係者のリモート出演、サムライインキュベート社員による解説を通じて、アイデアの背景や経過、今後の展開を取り上げ、D-EGGSプロジェクトの成果すべてを紹介しきったのだった。
この企画は、イノベーション推進チームの強い思いのもと実施された。金田さんが説明する。
「どうしても実現させたかったのが『30アイデアすべて伝えたい!』ということ。どんな優れた技術を持ち、どんな社会課題の解決になるか。また、どんな思いを持った人が取り組んだのか......そのストーリーも盛り込みたかったのです。
でも、一つひとつ丁寧に取り上げると全体が長くなり、短くすると伝わらなくなってしまう......。それらを一挙に解消できる手段が、オンライン配信でした。
日本テレビの『24時間テレビ』さながら、みなさんの頑張りをリアルに伝えられたのではないでしょうか。
アーカイブとして残るので、好きな時間に見てもらえるのもメリットです。たんなる発表会ではなく、『作品を残せた』という手ごたえもあります」(金田さん)
番組ラストでは、「広島県知事賞」「サンドボックス賞」「サムライインキュベート賞」が発表された(※「広島県知事賞」「サムライインキュベート賞」の紹介は最下部)。
このうち、イノベーション推進チームが選ぶ「サンドボックス賞」に輝いたのが、視覚障がい者向け歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」を手掛けた企業「Ashirase」(栃木県宇都宮市)だ。
代表の千野歩さんは、元ホンダのエンジニア。ホンダの新事業創出プログラムから出発し、D-EGGSプロジェクトもきっかけとなって、本格的な起業に至ったという。
プロダクトの「あしらせ」は、靴に取り付けたデバイス(の複数センサー)とスマホアプリを活用したものだ。足への振動によって、視覚障がい者の単独歩行をサポートする。
番組で中島さんも実際に装着し、音声によって設定したゴール地へ向かった。実証実験に参加した視覚障がいのある方の、こんな話も印象的だった。
「(日頃は)いろんなことに気を配って歩いています。道を間違えたらどうしよう、といこともあります。そうすると、風をきって歩けないんです。背筋伸ばして、顔をあげて、ということが。(しかし)ひとつ『あしらせ』に頼ることで、風をきって、空気を感じて、歩けます」