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人工知能は「長年の経験と勘」の代わりになるか? レモンの名産地・広島で、未来を変える挑戦

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2021.08.25 12:00
提供元:広島県

長年の経験と勘に頼る作業を、デジタル化できれば...

未来を変えようとする試みは、どこかで、誰かが、少しずつ始めているものだ――。

「2年前の2019年3月、大崎下島のレモン生産者を取り巻く、地域課題(生産者の高齢化や後継者不足など)を、技術の力で解決できないか――。そのためのアイデアを出し、プロトタイプ(試作機)をつくって実用性などを競い合う、合宿形式の参加型イベント『とびしまハッカソン』が開催されました。
参加した約40人が即席で数人のチームを組んで、最終日には試作機とともにプレゼンに臨みました」(真鍋さん)
真鍋さん。「私が持つ技術で、ひとつでも地域の課題解決に役立ちたかった。今回その思いがかないました」
真鍋さん。「私が持つ技術で、ひとつでも地域の課題解決に役立ちたかった。今回その思いがかないました」

こう話すのは、「とびしまハッカソン」(主催:広島県)優勝チームのメンバーの一人で、ふだんは一般企業に勤めるソフトウェアエンジニアの真鍋一成さんだ。同イベントでは、プランナーとして手腕を発揮した氏見真由美さん(会社員)ら5人で、チームを組んだ。

氏見さんは、レモンにまつわる課題の視察をおこなうなかで、レモンの「分類作業」に注目した。

「話を聞くと、従来はレモンの収穫後、サイズ、傷や黒点などの有無から、レモンの品質を等級ごと(A級、B級、C級など)に判別し、分類する作業を人手でおこなっていました。
長年の経験や勘に頼られているこの作業が、デジタル技術で一部代替できれば、後継者不足の課題解決に貢献できるのではないか。たとえば、経験が浅い若い人でも、判別がラクになる。知識がない人でも、すぐに代わってあげられる。あるいは、ベテランが新人に教えやすいツールがつくれないかな、と考えました」(氏見さん)
氏見さん。「実家が農業を営んでいたこともあり、農家さんの助けになりたいなという気持ちが強かったです」
氏見さん。「実家が農業を営んでいたこともあり、農家さんの助けになりたいなという気持ちが強かったです」

そこで提案したのが、レモンの「等級分類」をAI(人工知能)に判別させる「AI判定装置」だ。ソフトウェア開発を手掛けた真鍋さんは「最終日のプレゼンではうまく作動しなくて、頭が真っ白でしたけれど」と苦笑いだったが、実用的な点が高く評価された。

とびしまハッカソンでのプレゼンの様子。マイクを握る氏見さん
とびしまハッカソンでのプレゼンの様子。マイクを握る氏見さん

AI判定装置のソフトウェアには、機械学習やディープラーニング(深層学習)の技術が盛り込まれている。今回でいえば、大量のレモンの画像データをコンピューター(プログラム)に読み込ませて学習させることで、自動で「等級分類」ができるようになる。ただし、判定の精度は、プログラミングされたソフトウェアの性能に左右される。

「ハッカソン終了後、有志のメンバーが今後に向けて話し合う場があり、関係者一同、AI判定装置には可能性を感じてくれました。ただ、当時の試作機は、判定の精度が不十分。
精度を上げる改善を続けて、ゆくゆくは現場で役立ててもらえたらいいね、と。
私は引き続きソフトウェアを改良し、半年後には70%程度の精度を達成しました」(真鍋さん)
判定精度を高めた改良版「AI判定装置」(中央)
判定精度を高めた改良版「AI判定装置」(中央)

真鍋さんの努力の甲斐あって完成した、改良版「AI判定装置」は、中にレモンを置くと、その場で百貨店に並ぶような「A級」、スーパーで売られるような「B級」......などの結果が出る。

装置を「ぜひお披露目したい」と考えた氏見さんは関係者に呼びかけ、地元のカフェに展示。利用客の間で話題を集めている。

こうして、レモンにまつわる一連のプロジェクトは、成功裏に幕を閉じ......なかった!

レモン「AI判定装置」の成果に、注目した人がいた!
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