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隅田川と「芦」をめぐる悲劇【本所七不思議めぐり(3)両国編】

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2018.07.30 17:00
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もっとも陰惨なエピソードの舞台が終点

「そもそも椎の木ってどんな木だっけ」などと考えながら、最後に向かうのは両国橋のたもとだ。旧安田庭園・刀剣博物館から南下して両国国技館の前を進んでいく。

がらんとした国技館は独特の雰囲気(2018年7月記者撮影)
がらんとした国技館は独特の雰囲気(2018年7月記者撮影)

最後を飾るのは「片葉の芦」。名前からは前述の椎の木と植物つながりで微妙な印象を受けるかもしれないが、物語は本所七不思議の中でもっとも陰惨だ。

当時の絵草子『七不思議葛飾譚』によると、本所にお駒という娘が住んでおり、お駒に一方的に惚れ込んだ留蔵という男が何度も迫るものの、お駒はスルー。逆ギレした留蔵はある日外出したお駒を殺し、その片手と片足を切って、両国橋近くにあった駒留橋から堀に投げ込んだ。以来、駒留橋周辺に生える芦は、なぜか片方の葉しか生えなかったとされている。

強烈に逆光ですが両国橋です(2018年7月記者撮影)
強烈に逆光ですが両国橋です(2018年7月記者撮影)

現象は地味というか、日当たりの問題の可能性も否定できないが、そこに至るまでの内容があまりにも重い。「置いてけ堀」もなかなか怖いのだが、こちらは事件性が高いだけにホラー感が増す。交通量が多い両国橋のたもとに向かうと、なぜか急に騒音が聞こえなくなったような感覚に陥る。

肝心の駒留橋は現存しておらず、両国橋のたもとにひっそりと駒留橋跡と「片葉の芦」の案内板が立っているだけだが、心なしか首元がヒヤッとした。

案内板は意外にわかりにくいのでご注意を(2018年7月記者撮影)
案内板は意外にわかりにくいのでご注意を(2018年7月記者撮影)

こうして亀戸から始まった本所七不思議巡りも、無事修了した。両国橋から隅田川を眺めて、しばし江戸のロマンや七不思議の微妙な不思議感に思いを馳せたりしてもいいだろう。

現代では、大抵の不思議にはなんらか理由や答えが用意されているが(記者もさんざんここまで突っ込んできたが)、江戸時代はリアルと物語の曖昧な部分がもっと広かったのだろう。多分、妖怪などが住んでいるのも、そんな領域だったはずだ。今や曖昧さを楽しむ時間的余裕もなかなか取れないが、たまには七不思議巡りでもしてみてはどうだろうか。

今では芦も見当たらない(2018年7月記者撮影)
今では芦も見当たらない(2018年7月記者撮影)

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