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83歳筆者が観た「SNOWDEN」...便利な世界の裏の恐ろしさ、理不尽さ

ぶらいおん

ぶらいおん

2017.02.14 11:00
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映画「スノーデン」公式サイト
映画「スノーデン」公式サイト

映画「スノーデン(SNOWDEN)」が公開中だ。あのエドワード・スノーデンを、「JFK」などで知られるオリバー・ストーン監督が描いたとあって、世界的な話題作となっている。

83歳のぶらいおんさんも、地元の映画館で本作を鑑賞した。今回は、その感想をお届けしたい。

ガラガラの映画館に嘆きつつ...

   今(2017年2月2日(木))、上映中の表記映画をジストシネマ和歌山の(同日15:30上映の回)で観た。上映室は入口から一番奥に位置するシネマ5(89席)である。それもその筈、我々(筆者と同行者1名)の他、観客は、上映終了時に確認したところ、他に3、4名しか見当たらなかった。

   これには、筆者も驚いた。地方都市のウイークデー、こんな時間帯だからだろうか?

   それでもここはバスで、和歌山大学へ向かう途中にある。筆者の感覚で言えば、学生の10人前後くらい居ても不思議は無い、と思うのだが...。

   それとも、映画の内容自体がニュース・バリューから考えれば、タイムリーでは無いからなのであろうか?

   あるいは、映画と称する、この表現形式、つまり、映画館という限られた場所における上映という制限のある鑑賞形態そのものが、もはや時代の要請にそぐわないということなのか?

   あるいはまた、ことの重大さには気付かず太平楽を決め込んでいる、何処やらの国の花札大統領...?、いや、そうでは無かった、トランプ大統領とかいうポピュリズムのリーダーを民主的な選挙によって自ら選んだ世界ナンバーワンの、移民大国の国民と全く同類の我が国民達のセンスという点では、所詮こんなもので当然か?

   阿久悠という昭和を代表する作詞家、中島みゆき作曲の歌「世迷い言」の一節で、日吉ミミが歌っていた歌詞が筆者の耳の底に響いている。曰く、『上から読んでも下から読んでも"よのなかばかなのよ"』ということに尽きるのか?

   まあ、悪態を吐くのはこのくらいにして、先に進むことにしよう。

   以下は、専ら、上記映画「SNOWDEN」のパンフレットおよびウィキペディアの「エドワード・スノーデン」の記事を参照し、筆者の考えを述べたものだが、他にも既に電子書籍で購入してあった「スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実」著:ルーク・ハーディング、訳:三木俊哉/日経BP社および「曝露 スノーデンが私に託したファイル」著:グレン・グリーンウォルド、訳:田口俊樹・濵野大道・武藤陽生/新潮社を参照した。

   Edward Snowdenというこの若僧のやったことは、それこそ「まっこと、どぇりゃあことだで!」というに尽きる。高卒の(大卒が優れているわけでは無いことは、この優秀なPCオタクが存在することで、証明されている)、その彼のやったことは、彼の出身国である米国のみならず、どんな国でも、先ず例外なく国家反逆罪に値する内容であろう。

   尤も、高卒という学歴については、アン・アランデル・コミュニティカレッジ(単科大学)に入学してプログラミングなど計算機科学を専攻した、ということだから、記録上卒業はしていないというだけで、全くの独学というわけでは無く、一応こうしたカレッジで学んではいる。

   Snowdenの実行した主要な事柄というのは、彼の母国、アメリカ政府が国民の了解を求めること無く、秘密裏に国民の電話やメールの監視を行うプログラムである「PRISM」の存在を暴露したことだ。

   それは、この段階では単に、アメリカという或る1国の国内問題に過ぎない。しかし、民主主義を標榜し、憲法で保障された個人の自由、個人のプライバシーを侵害するという、国家により為された国民に対する重大な裏切り行為を白日の下に曝したことになる。

   つまり、この若者は、NSA(国家安全保障局)の契約職員として、国家による国民に対する裏切り行為を内部告発したことになる。これがどんなに大それたことか、凡人の想像を遙かに超える事態と言えよう。

   先ず、厳重に保管され、秘密の守られている筈の、証拠となるべき記録を見つけ出し、しかも、それにアクセスしたことが、バレないようにしながら、それらをコピーし、厳重にガードされている筈の施設から、それを持ち出すだけでも並みの能力では到底不可能であろう。

   そのようにして、持ち出した膨大なデータを、敢えて外国の著名な通信社、すなわち英国の『ガーディアン』紙および自国である米国の『ワシントン・ポスト』紙や香港の『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』紙を選び、注意深く連絡を取り合いながら、最終的には本名を明かして世界中に訴える、という挙に出たわけだから、その能力、決断、信念には脱帽せざるを得ない。

   ところが、その暴露行為は、それだけに留まらず、更に大きな展開を見せる。

   つまり、一時世界中を駆け巡る大ニュースとなった、各国元首や首相、たとえばフランスのオランド大統領やドイツのメルケル首相などの電話盗聴問題である。

   ガーディアン紙は、SNOWDENが持ち出した極秘文書により、NSAが日本を含めた38カ国の大使館に対しても盗聴を行っていたことをスクープしている。対象となっている大使館は、日本やフランスやイタリア、ギリシャ、メキシコ、インド、韓国、トルコなどの同盟国も含んでいた。

   ワシントンの欧州連合(EU)代表部への情報収集工作のケースでは、暗号機能付きのファクス内に盗聴機と特殊なアンテナが仕組まれ、約90人の職員のパソコン内のデータ全てをのぞき見る手法で実施されていたそうだ。

   フランスのオランド大統領は「同盟国に対するこのような行為は容認できない」とし、ドイツ政府報道官は「全く容認できない」とする苦言を呈した。これらの報道に対してオバマ大統領は、一般論として「諜報機関を持つ国ならどの国でもやっていることだ」として、同盟国の大使館に対する諜報活動への理解を求めた、ということだ。

   このことに関し、日本では、菅義偉内閣官房長官が「米国内の問題なので、米国内で処理されることだ」「日米間の外交においては、しっかりと秘密は守られるべきだ」とのみ述べた。

   2015年7月31日には、内部告発サイト「ウィキリークス」がアメリカのNSAが少なくとも2006年ごろから日本の内閣、日本銀行、財務省などの幹部の盗聴を試みていたとして、米政府の関連文書を公開し、これに対し菅義偉内閣官房長官と安倍晋三内閣総理大臣は「事実であれば極めて遺憾」と述べたが、抗議には至らなかった。

   更なる問題は、これらの盗聴行為の実行に際し、専ら米国のIT企業の協力があった、ということだ。

   具体的には、通信傍受にはマイクロソフト、Yahoo!、Google、Facebook、PalTalk、YouTube、Skype、AOL、アップルなどが協力させられていたことは、以前から指摘されていたが、Snowdenの持ち出した資料によってその一部が明らかとなった。

   Microsoftは、NSAが通信傍受しやすいようにMicrosoftチャットの通信暗号化を回避(バックドア)した。またストレージサービス「スカイドライブ」へのNSAの侵入を容易にするように配慮を行った。

   Skypeについても、NSAが容易に情報を取得できるように特別チームを編成して、その技術的問題を解決した、とされている。

   また、フェイスブックには2012年後半の6ヶ月間で、NSAから18000-19000個のユーザーアカウントについて情報提供依頼があったと報告した、そうだ。

   ここまで書いて来れば、この世界的大事件が、これを読んで下さっている、あなたご自身と決して無関係では無いことが、幾らかでも想像して頂けたであろうか?

   あなたのSNS上での書き込み、記事の閲覧、携帯電話の会話内容、会話相手などのプライバシーは勿論、銀行の預金残高や、資産や、家族構成、病歴や、離婚歴や、犯罪を犯していれば、犯罪歴だって、その他何であっても(インターネットが接続可能な、何処かにデータがあれば-日本では、既にマイナンバー制度システムが構築されてしまっている。)...、要するに、あなたは素っ裸にされて、他人に知られたくないような事柄も全て、Snowdenによって曝露されたプログラム「PRISM」により既に盗まれているか、あるいはNSAや類似の機関がその気になれば、何時だって、データ蒐集可能である、ということを意味する。

   つまり、アメリカ政府がやっているのは、自国の憲法に違反することは勿論、世界的なルール、慣習、あるいは多分、国際法にも違反するような無茶苦茶な暴挙を「テロの阻止」という"excuse"(ここでは「釈明」くらいにして置こうか)の下に平気で遂行している、という事実である。

   この辺りまでは、筆者のHD内に録り溜めてあったTV録画、NHK「BS世界のドキュメンタリー」(4回シリーズ)(製作国はアメリカ)、タイトルは「NSA 国家安全保障局の内幕」を改めて視聴してみたが、その内容はオリバー・ストーン監督の、この映画の内容と特に矛盾するような個所は見当たらないように思えた。

   映画の方では、更に(パンフレットの記載引用)表題<2009年-東京・横田基地>の下に『民間IT企業のスタッフとして働いていたスノーデンに、皮肉にもふたたびNSAでの仕事が言い渡される。(中略)だがアメリカ政府の諜報活動はオバマ政権になっても変わっていなかった。NSAによる監視は、もはや同盟国政府や、民間企業、何の罪もない世界中の市民にもおよび、各国の通信システムばかりでなく物的なインフラも操り、明らかにテロ防止の目的を逸脱していた。(後略)』とある。

   つまり、アメリカ政府によって、日本のあらゆるインフラ、すなわち、道路、鉄道、上下水道、送電網、港湾、ダム、通信施設などには、既に秘密裏にマルウェアが埋め込まれてあって、万一、日本がアメリカ(宗主国?)のご意向に反したりすれば、直ちにこれによって報復され、その結果、アメリカは日本のあらゆるインフラを混乱させ、破壊することが何時でも可能なところまで、既にやられてしまっているということだ。

   それを聞けば、日本政府を担う政治家共が妙にアメリカ政府に対し、卑屈極まりなく、従順であるのも逆にまた、納得出来る、と言うものだ。

   要は、敗戦の1945年8月15日を遡る同年6月20-23日に沖縄守備軍最高指揮官である第32軍司令官牛島満中将と参謀長長勇中将が、摩文仁の軍司令部で自決した。その結果、沖縄守備軍の指揮系統が完全に消滅して以来、沖縄を含む日本国はアメリカ合衆国に完全に占領され、表から見え難いだけで、その状態は今でも引き続いており、ずっと占領下のままである、と観ることも出来る。

   これらの事実を識った上で、読者諸氏は、どうお考えになるだろうか?

   購入した映画のパンフレットの中見出しには、こうある。すなわち、「世界を信じた、純粋な裏切り者。」、「スノーデンとは英雄か、それとも国家の裏切り者か? 史上最大の内部告発"スノーデン事件"の衝撃的な真実」。

   因みに、Snowdenに関して、次のような事実もある。

   2014年1月14日、アメリカのNPO「報道の自由財団」が取締役会の理事として迎える意向をホームページ上に発表した。翌2月からスノーデンは同理事に就任している。

   2014年2月、グラスゴー大学の名誉総長に選出された 。

   2015年2月 エドワード・スノーデンの一連の暴露をドキュメンタリー化した映画"CitizenFour"がアカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞。

   また、2014年1月、ノルウェーのボード・ソールエル元環境大臣からノーベル平和賞候補に推薦された。

   少なくとも、このコラムを読まれるような方は、当然、インターネットやSNSに親しんでいるだろうし、特にそうした意識はなくても、携帯電話を使用したり、オンライン・ゲームなどをやっていれば、この情報社会で絶えず、危険に曝されているわけだし、もう、そうした情報社会における生活様式から逃れることも出来ないだろう。

   だからこそ、このように便利な世界の裏の恐ろしさ、理不尽さを正しく把握して、人間として、どうあるべきか?この理不尽な暴挙を糺して、これを少しでも真面な方向に軌道修正させるべき努力を常に怠ってはならないし、そうしなければ、世界平和はおろか、世界は破滅の方向へまっしぐらに進んで行くことは略間違い無いであろう。

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筆者:ぶらいおん(詩人、フリーライター)

東京で生まれ育ち、青壮年を通じて暮らし、前期高齢者になってから、父方ルーツ、万葉集ゆかりの当地へ居を移し、地域社会で細(ささ)やかに活動しながら、105歳(2016年)で天寿を全うした母の老々介護を続けた。今は自身も、日々西方浄土を臨みつつ暮らす後期高齢者。https://twitter.com/buraijoh
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