東京生まれ東京育ち28歳、でも「東京タワー」にのぼったことがありませんでした
JタウンネットのK副編集長(28歳)は、東京に生まれ育った。しかし、お恥ずかしい話だが、地元のシンボル「東京タワー」には、一度ものぼったことがない。近いからこそ「いつでも行ける」と思っていたのだ。
地域ネタを仕事にしているのに、地元の観光地を知らない――。これで良いのだろうかと悩んでいると、T編集長から使い捨てカメラを手渡された。「行くんなら、持っていきなよ」。初心に帰って「おのぼりさん」になるには、うってつけのアイテムだ。「私ものぼったことがないんです」という女性新人記者I(こちらも東京育ち)を連れて、タワーへ向かった。
だんだんワクワクしてきた
東京メトロ日比谷線の神谷町駅。2番出口から地上にでると、ツートンカラーが目に入る。見慣れた光景ではあるが、「あっ! タワーだ」と喜んでみる。指をさすと、がぜん「おのぼり感」が増して、楽しくなってきた。記念すべき1枚目をパシャリ。
デジカメではないので、撮影ごとに「巻き上げ」が必要だ。シャッターチャンスを逃さないよう、撮ったらすぐ巻き上げる。わずか27枚しか撮れない。計画的に使っていこう。
東京タワーに着き、まずは土産物屋へ。観光スポットでよく見る「記念メダル」の自販機があった。このメダルに目がないK副編集長。「刻印機がタッチパネル式になった......」と肩を落としながらも、ガチャン、ガチャンと刻印されるのを見ていると、「オレはこの地に痕跡を残したんだ!」などと意味不明な昂揚感につつまれる。
昼食を食べて、いよいよ大展望台へ。調子に乗って、写真を次々撮っていると、残り1枚になってしまった。数年前に高さ306メートルで見つかった「謎の軟式ボール」も気になったが、ここはガラス張りの床「ルックダウンウィンドウ」にしよう。ヒヤヒヤしつつ、自撮りにチャレンジ。うまくいくか。
編集部近くの写真屋さんに現像を頼む。はたして、ちゃんと撮れているのか――。
遠景はキレイに撮れていた
2時間ほど経って、写真を取りに行く。現像料は1836円。「えっ、こんな高かったっけ」。戸惑いとともに紙袋をあけると、味わいある写真が出てきた。風景写真なら使い捨てカメラでもキレイだ。
キレイではあるが、やはりアナログならではの質感はある。たとえば、タワー前の記念撮影パネルで撮った写真は、どう見ても2016年のものではない。
「出張で立ち寄った東京タワーにて(昭和51年撮影)」
なんてキャプションを付けたくなる。
展望台から撮った写真も、なかなか趣がある。一見すると「1990年代のビル街かな?」とも思うが、ちゃーんと虎ノ門ヒルズ(2014年)も写っている。現代の東京を切り取った1枚である。
27枚も撮ったのだから、すべてがキレイな仕上がりとは限らない。昼食の「豚丼」を食べる様子は、全体的に暗くボヤけてしまった。デジカメなら「フラッシュをたいて撮り直そう」となるが、フィルムカメラでは、そうはいかない。
被写体が近すぎて...
ハシャギながら撮った、記念メダルもよく見えない。これはフラッシュに加えて、被写体が近すぎたことが敗因だろう。ちなみにメダルの刻印は、
「J-TOWN・NET FUKUHENSHUCHO 2016・08・26」
となっている。欲しい方には、実費でプレゼントしようと思う(編集部までご一報ください)。
大展望台より、さらに上の「特別展望台」へも行ってきた。ここでしか買えない、手売りの開運グッズ「高得点」(250円)を買ってみたが、こちらもボケボケだった。ちなみに、ネーミングの由来は「(東京タワーで一番)高(い)特(別)展(望台)」だそうだ。
より満喫しようと、タワー大明神にお参りしたり、日ごろお世話になっているT編集長にポストカードを送ったりもした。写真は全体的にやわらかい色になっている。
そして問題の自撮りは――。
カメラを回してくれたI記者も、初めての東京タワーに大満足だったようだ。
「東京タワーは遠くから見たことがあるだけで、登ったことも、近くで見たこともなくて。恥ずかしながら、どこにあるのかも知らなかったです。でも行ってみたら、意外と楽しくて。景色もよく見えるし、見どころも色々あって。次はぜひデートで行きたいですね」
地元の観光名所と、フィルム式カメラ。ふたつの「原点」に立ち返った遠足で、改めて気づいたことがあった。
「気になる場所は、行けるときに行く」
「取材先では、なるべく楽しむ」
「ひと手間かけると味が出る」
これからも、これらの発見を大切にしながら、仕事をしていこう。