主要3候補「以外」の都知事選(1)高橋尚吾さん 「選挙は戦いじゃない」他候補の応援演説続ける
「政争から行政を切り離す」...公約をひたすら、語る
2016年7月24日12時半、選挙期間最後の日曜日。筆者は、高橋さんに同行させてもらい、地下鉄で有楽町駅に降り立った。
「......気が重いですね。吐きそうなくらい」
その表情は、緊張に青ざめている。無理もない。何しろ、今から他の候補のもとに、アポなしの「応援演説」に向かうのだから。
高橋さんの公約の核心は、「政争主体の政治から、政治行政を私達の手に取り戻す」。
本来、何よりも都民のために、都民の側に立って行政をなすべきなのが、都知事という立場だ。しかし実際のところその地位は、(今回の選挙に典型的なように)各政党の思惑の中で争われている。そんな選挙戦を通じて誕生した都知事は、結局都民のためでなく、支援してくれた政党や、自分のための行政しかできない。選挙の時に掲げた公約すら、守られない。だから、それを変える。
その公約は、いわば都政のあり方、政治のあり方を、そして社会の構造そのものを問うものだ。いわゆる「わかりやすい」ものではない。
それでも高橋さんは、その公約をひたすらに語る。聞く人もそう多くない街頭演説でも。通りがかったご婦人にスマホで記念撮影を求められた時でも。繰り返し語る。
「行政が政争に左右されることは古くから、学問の世界でも批判されていて......」
街頭演説に集まった報道陣に対しても、鬼気迫る声で語る。
「選挙期間に入る前の大事なときに、社会問題を取り上げたりせず、どの政党が権力を得るか、そのような話に汲々としてきたのは、あなた方だ!」(25日の立会演説会で)
この「本当の選挙」の理想を語るために、立候補した。300万円という供託金を、借金と有志からの支援で集めた。今や、家賃や食費ですらいっぱいいっぱいだという。
その真剣さ、切迫さはやはり伝わるのだろう。話を聞き終えた人は、「がんばって!」と激励して去っていく。高橋さんはその背中に呼び掛ける。
「また、会いましょう!」