主要3候補「以外」の都知事選(1)高橋尚吾さん 「選挙は戦いじゃない」他候補の応援演説続ける
「来るな」と追い返されても、なお
高橋さんと、他の候補を探して銀座を歩く。中央通りに出たところ、ちょうど鳥越俊太郎さんの演説会が始まろうとしているところだった。応援弁士として、蓮舫・民進党代表代行がよく通る声で語り倒している。
「鳥越さんか......」
迷った様子だった。筆者も正直なところ、これだけ大勢のスタッフ、支援者に囲まれている中に乗り込んでいくのは、いくらなんでも難しいのではないか、と感じた。だが、高橋さんは考えながらも、演説会の輪に入っていく。
聴衆の最前列で、蓮舫さんの姿を見上げること5分強。高橋さんは動いた。選挙カーへと、つかつかと近づいていく。
すぐに、スタッフと見られる男性がそのまえに立ちはだかった。明らかに、歓迎されている様子はない。声は聞こえなかったが、3分近く、高橋さんは食い下がったが、やがてこちらに戻ってきた。
「来るな、選挙妨害だ、と......」
なんと声をかけていいものか。諦めてその場を去ろうとしたちょうどそのとき、鳥越さんが演説に立った。
「鳥越俊太郎です――」
高橋さんが振り返った。そして、拳を彼に向けて掲げた。「がんばれ」のエールだ。
演説会場から離れてしばらくして、高橋さんが涙を流すのを見た。小池さんのために作った緑の布で、それをぬぐう。悔し涙かと思った。だが、違うと言う。
「争いにあおられ、政権のために行政を得るんだという、その流れから脱却できない皆さんを見て、『かわいそう』だと......」
それでも高橋さんは、その歩みを止めることはない。この日も銀座で、そして新宿で、合計5人の候補者の「応援演説」に立った。「戦い」を止めるよう訴えた。
「みんなを応援したいんです、私は。本当に全ての人を」
選挙は戦いではないと、高橋さんは言う。だが高橋さんは、確かに戦っている。もちろんその「敵」は、他の候補者ではない。