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10分で打てるこねないうどん 埼玉県ときがわ町の「一膳取り もろやま華うどん」

at home VOX

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2016.02.10 22:44
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■地域のみんなが集まるきっかけに

たった10分で打てる、もろやま華うどん。短い時間でおいしいうどんができる秘密は、意外にもそば打ちで重視される「水回し」という手法を取り入れたことでした。水回しとは、そば粉に水を入れて全体にしっかりとなじませ、そば粉同士の粒子を水でつなぐ工程のこと。うまくやるとコシがあるそばになり、失敗するとゆでただけで切れるそばになってしまいます。その工程を見せてもらいました。

もろやま華うどん作りを実演する新井康之さん。
もろやま華うどん作りを実演する新井康之さん。

新井さん「プロ向けの基本的なレシピでは12人前を10分で作ることができます。まず1キロの小麦粉に水を入れます。今日は気温10度なので、加水率は58パーセント。つまり580グラムです」

水は蚊取り線香を描くように3回転半注ぎます。
水は蚊取り線香を描くように3回転半注ぎます。

うどんの加水率は季節に応じて変わるものですが、一般的なうどんは40〜50パーセントほど。58パーセントはやや高い印象を受けますが、この加水率が生地に適度なコシと豊かな風味をもたらしてくれるそうです。 そしてポイントは次の工程。本来このあとに小麦粉を手でこねる「こね」と、できた生地を数十分から数時間単位で休ませる「ねかし」があるのですが、新井さんが取り出したのは、パスタトング割り箸でした。

新井さん「パスタトングで中央に目を作ったあとに、割り箸で混ぜていきます

割り箸でぐるぐるとかき混ぜると、水が小麦粉に行き渡ってまとまってきます。
割り箸でぐるぐるとかき混ぜると、水が小麦粉に行き渡ってまとまってきます。

この工程が水回しです。本来は手で行うものですが、割り箸でやるのは新井さんのオリジナル。手で混ぜると、どうしてもこねてしまいがちですが、割り箸なら心配無用。多加水の柔らかい状態の小麦粉を生地にまとめるには、こねないことが大切だそうです。 小麦粉に水が浸透すると、勝手に大小の塊になっていくので、あとは生地を手でこねずにひとつにまとめ、軽く手で押して空気を抜き、麺棒で平たく伸ばして、たたんで切れば完成。一般的なうどん作りとほぼ同じですね。

8層に折りたたんだ薄い生地を切ると、見事なうどんのできあがり!
8層に折りたたんだ薄い生地を切ると、見事なうどんのできあがり!

つまり、高めの加水率と水回しによって、「こね」と「ねかし」をせずにおいしく作れるうどんだということですね! このようなユニークな製法で、どうしてうどんを打とうと思ったのでしょう?

新井さん「かつて私は毛呂山町役場の職員でした。2004年に福祉課に配属されたのですが、そのとき課題に感じたのは、地域の結びつきがないから、福祉が始まらないということだったんです」

ときがわ町からほど近い毛呂山町では、地域の高齢化が進んでいました。体が弱くなっていくお年寄りは、何か集まるきっかけがないと家に引きこもりがち。そこで月に一回集会所などに集まる“地域デイ”のような催しが助けになるのですが、年金生活なので会費がかかると参加が難しいという声も多かったそう。

新井さん「だから集まるきっかけとなるような、コストがかからない催しが必要だと考えました。私は江戸流のそば打ちを習っていたのですが、15分もあればできるそば打ちは催しとしては良いんです。でも材料費が高いし、アレルギーもある。ではうどんはというと、完成に時間がかかるので集会の時間内に収まらない。そこで、そばのようにさっと作れるうどんを目指して開発したのが、もろやま華うどんなんです」

店でふるまわれるもろやま華うどんは、店の奥にある専用工房「落葉庵」で作られています。
店でふるまわれるもろやま華うどんは、店の奥にある専用工房「落葉庵」で作られています。

こうして新井さんは2004年から普及活動をスタート。地元での講習会はもちろん、東日本大震災が起こってからは被災地の仮設住宅などを訪問し、実演や講習を実施してきました。役場を定年退職した現在も、活動は続いています。

新井さん「いまの時代にこそ、みんなで手作りすることが大事です。店に来て食べるのもいいけど、ぜひ自分でも作ってみてほしいですね。きっとおいしいうどんができると思いますよ」

実は、菜の花茶論は熱心なそば・うどんファンからは知られた店。全国からやってきたファンが、もろやま華うどんの作り方を教わって帰ることもあるそうです。レシピはインターネット上でも紹介されていますが、興味がある人はお店に行って、教えてもらってみてはいかがでしょう?

店舗情報 ●菜の花茶論 住所:埼玉県比企郡ときがわ町西平959-1 電話:0493-67-0337 営業時間:11:30~19:00(日月火第3・4土曜休) ※第1・2土曜日は「華うどんの日」(11:30〜15:00)、詳しくは要問い合わせ

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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