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福岡・スタートアップカフェの利用者は「19~82歳」...幅広い世代の起業熱を支える積極行政

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2015.07.31 13:00
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アメリカのシリコンバレーやシアトルは、「スタートアップ都市」として知られている。世界中から集まった優秀な頭脳が競うようにベンチャー企業を立ち上げ、切磋琢磨しながら成長し、やがてその中から国際的な大企業が生まれてきたからだ。
日本でも千葉市、横須賀市、浜松市、奈良市、福岡県など8県市が、スタートアップ都市を宣言している。その旗振り役を務めているのが高島宗一郎福岡市長だ。

創業の裾野を拡大するため、気軽に相談できる空間を設けたい――そう考えた市は、起業家の意見や海外での事例をもとに「スタートアップカフェ」を2014年10月に設立した。
福岡の今を掘り下げる今回の連載、第2回はこのスタートアップカフェを中心に「起業」にまつわる事情を紹介する。

スタートアップカフェのトップページ
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新施設効果で相談件数は3倍以上も増加

場所はアップルストア福岡天神の向かい、TSUTAYA BOOKSTORE TENJINの3階にある。TSUTAYA店内にあるビジネス書籍を自由に持ち込んで読めるほか、無料Wi-Fiや電源、コピー機を備えている。

2015年6月末時点の累計相談件数は922件におよぶ。
市の創業・大学連携課によると、「行政が従来から行っている相談窓口は利用しづらい」という声が挙がっていたそうで、2014年度の相談件数は300件にとどまっていた。一方、カフェの相談件数はそれを3倍以上も上回っている。まだ1年経っていないというのに。

スタートアップカフェは西鉄福岡駅近くの好立地。
スタートアップカフェは西鉄福岡駅近くの好立地。

19歳の大学生から上は82歳まで、様々な年代が利用する。留学生や外国人も相談に訪れる。

「相談者の年齢を集計しているわけではないですが、コンシェルジュの感覚ですと、利用者の6割が男性で4割が女性。年齢層は30代が中心です」(創業・大学連携課の担当者)

カフェの最大の魅力は、法律や税務、ビジネスプラン構築に通じた専門家が、コンシェルジュとして10~22時の12時間常駐していること(相談受付は21時まで)。無料・予約無料なしで相談に応じてくれるほか、相談者の求めに合った行政支援サービスを紹介してくれる。
相談したい内容によって、マッチする窓口は異なる。まずはコンシェルジュに相談することで、問題クリアに一番近い道を教えてくれるというわけだ。

相談内容として多いのは、会社設立の手続きなどに関することや、マーケティング・販売促進、ビジネスマッチチングや専門家の紹介、事業計画の課題抽出など。自己アイデアのブラッシュアップにも利用できるので、リピーターも少なくない。
利用者からは次のような声が届いている。

「間口と敷居が広く、利用しやすい」
「福岡への移住者にとっては、ネットワーキングを拡げることができるのが嬉しい」
「イベントのテーマが様々で、どれもためになる」

ここで行われるセミナーは、市=カフェ主催のイベントとは限らない。
これまで行政が行っていた士業の相談会や創業支援のセミナーなどを、民間が自主的に開催するようになった。その一つが、コンシェルジュ以外の税理士・行政書士・弁護士・司法書士・日本政策金融公庫の人たちが無料で相談に応じる「個別相談DAY」。毎週木曜に行われる。

利用者が会社を設立したケースは、カフェ側が把握しているだけでも20件以上に達するという。

福岡の若者の起業意欲は高まるか

福岡は、西日本で公的サービスの支援が充実している都市の1つだ。
九州地方の中枢都市だけあって、市や県の創業支援施設・事業が揃っている。政府機関の日本政策金融公庫や独立行政法人の中小企業基盤整備機構もある。さらに民間資本や組織は、インキュベーションやアントレプレナー教育、ファンド、コミュニティなどの分野で活躍している。

経済センサスによると、福岡市内の新設事務所数は常に全国平均を上回っている。2006~2009年の4年間は、16政令指定都市の中で福岡が4.1%でトップだった。
ただ、その代表者の年齢をみると50代が28.6%と最も多い。次いで40代が25.7%、60代が21.8%と続く。30代は15.5%、20代は1%に過ぎない。会社経営の経験者が事務所を立ち上げるケースが多い。
一方、全国値で最も多い年代は30代。起業経験のない人も起業するケースが高い。

福岡を名実ともにスタートアップ都市にするには、若者のハートにベンチャー魂を注入することが必要だ。
2010年、市内にグロービス経営大学院大学が開校し、山口や広島からもベンチャー志向の若者が集まるようになっている。
また市内の大学では起業・創業に関する授業が行われている。そこで学んだ学生たちが大学外でコミュニティを形成するなど、意欲的に取り組みを行っているという。

カフェの話に戻すと、5月末にお穣さま学校で知られる福岡雙葉高校の学生たちが、「夢をカタチにする女子~クリエイティブなデジタルものづくり~」をテーマに総合学習を行った。
こうした地道な努力は必ず実を結ぶことだろう。

福岡はネット時代にマッチした都市

人のつながりを大事にする福岡は、プライベートと仕事の垣根の低さから、いい意味で公私混同する人が多く、優秀な人材にリーチするのが早いと言われる。
そう考えれば福岡はネット時代にマッチしている。日本の都市で世界的ベンチャー拠点に一番近いといえるだろう。志を同じくする場が集まりやすく、フランクに語り合う場を市がつくったのは大正解だ。

最後に。今後の展開について市の担当者は次のように語る。

「今年度から新たに取り組んでいる、相談などの『外国語対応』と人材マッチングについて、積極的に広報を行うなど、利用者の増加を図っていきたいと考えています」 「国内外からチャレンジしたい人と企業が集い、新しい価値を生み続ける都市を目指して皆さんとチャレンジし続けます。起業を志している方は、ぜひ福岡でチャレンジしてください」
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