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新郎を雪上に投げ飛ばす! 新潟の奇祭「むこ投げ・すみぬり」

織江賢治(おりえ・けんじ)

織江賢治(おりえ・けんじ)

2014.01.14 21:00
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今回から始まりますこのページでは、祭りウォッチャーの織江(おりえ)が、「なんでこんなことやるの!?」と思わずツッコミを入れたくなるような、全国の「奇祭」を中心に、珍スポットや珍駅などをご紹介していきたいと思います。以後、よろしくお願いいたします。

奇祭のルーツは略奪婚

さて1回目は、毎年1月15日に新潟県の十日町市、松之山温泉で行われる「むこ投げ・すみぬり」です。一体どんな祭りなのかというと、字面のご想像通り、新婿殿が崖下に豪快に投げられちゃうのです!

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300年くらい前からこの地域で小正月に行われる伝統行事で、昔の略奪結婚をルーツに、よそ者に集落の娘を取られた若い衆の腹いせが形を変えたものといわれています。

投げられる新婿は全部で3人。毎年地元の集落と一般公募から選ばれるそうで、私は2012年の1月15日に取材しました。

ちなみに松之山温泉は、日本一のホウ酸含有量を誇り、かつ塩分濃度も強い温泉で、薬効高く、草津、有馬とともに「日本三大薬湯」に数えられているそう。上杉家の癒しの湯としても使われていたようです。

アクセスはJR越後湯沢駅から北越急行(ほくほく線)に乗り換えて、まつだい駅にて下車。そこから松之山温行きの東頸バスで終点まで。東京からだと2時間40分ほどで着きますが、ほくほく線や東頸バスの本数も少なく、行く場合は注意が必要です。

ということで、祭りの時間に確実に間に合うためにも、じっくり温泉を楽しむためにも、この日は前乗りして14日に出発です。

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ただ、さすが日本有数の豪雪地帯! 越後湯沢駅に到着したあたりからかなり吹雪いていましたが、まつだい駅の周辺では5メートルほどの雪の壁ができていて、ビックリ! 雪の壁なんて、初めて見ましたよ。

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女体の両チクビからお湯がピュー

幸い、まつだい駅には宿泊先である白川屋さんが車で迎えに来てくれたので助かりましたが、実はこの白川屋にはちょっと変わったお風呂がありまして......。

それがこの『おっぱい風呂』! ご覧の通り、石でできた女体の両チクビから、泉温97度、毎分600リットルの温泉がビュービューと発射され、心も体もほっこり。まさにいろんな意味で癒してくれます。

おまけにメシもすげぇ美味くて、オリジナルの温泉シュウマイはもちろん、松之山で獲れた新鮮な山菜がたっぷり入った鍋、ごま豆腐など、魚沼産の白飯があっという間になくなりました。普通に泊まっても大満足でした。

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崖に向かって5メートル投げられる

さてお祭り当日の15日は、朝から集落を散歩。公共浴場「鷹の湯」などに行ったり、ラーメン屋で昼食をとったり、むこ投げ会場を下見したりして、時間を待ちます。

湯守処「地炉(じろ)」の先に崖上にある薬師堂と、そこからの景色。ここから婿が投げられるそうです。

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13時くらいになると、だんだんと見学者が続々と集まり始めたため、早めに好位置をキープ。しかし雪がこんこんと降り積もり、寒くてキツイです。見学する際は防寒具を忘れずに!

そしていよいよ! 14時過ぎ、ブォ~~、ブォ~~というほら貝の音のもと、3人の新婿が「わっしょい! わっしょい!」の掛け声とともに仲間に担がれて上ってきました。

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新婿は薬師堂の前でいったん降ろされますが、実行委員長?の開始宣言と同時にすぐさまスタンバイ。

そして、再び委員長から「今から○○さんを投げま~す」と宣言されると、仲間たちに胴上げされ、「い~ち、に~い、さ~ん!」と崖へとダイブ!!

......と思いきや、投げが甘く1メートルほどのところで雪にズボッ! 会場からは「あ~...」というため息がこぼれましたが、それでも新婿、仲間からは笑顔があふれ、一安心。続く2人目の新婿は豪快に投げられ、ゴロゴロと派手に転がり視界から消えていきました(笑)。3人目はなんと自衛隊の新婿。投げる仲間も自衛隊のため、5メートルほどもぶん投げられていました。さすがです。

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ここまで時間にして15分ほど。むこ投げは非常にスピーディーに終了です。

勝手に顔が真っ黒に塗られちゃう

続いては崖下にある広場にて、「すみぬり」の始まりです。

すみぬりは注連縄や正月飾り等を集めて作った「賽の神」という塔を燃やし、その灰を雪と混ぜて「おめでとう」と言いながらお互いの顔に塗りたくる神事です。これにより無病息災・家業繁栄を願うわけですが、ステージからの「宝みかん」蒔きが終わりブォォ~、ブォォ~ッと開始を告げるほら貝の笛が鳴らされると、みなさん一気にヒートアップ!

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投げられた新婿さんは早々に真っ黒!
その美人の新嫁さんも真っ黒!
先導役のおっちゃんも真っ黒!
取材に来たお笑い芸人も真っ黒!
僕らみたいな観光客も真っ黒!
まるで「お前を無病息災にしてやろうか!」と言わんばかりに、近くにいた人に手当たり次第グリグリと墨を塗りまくる! まさに無礼講! みなさん童心にかえって真っ黒になってました。

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賽の神が朽ち果てると、すみぬりもいよいよお開きです。祭りの余韻を顔に残し、みなさん笑顔で帰路についておりました。3組の新婚さんには幸せになってもらいたいですね。

お土産は「おっぱい風呂酒」

私は白川屋さんのご好意で、再びおっぱい風呂に入らせてもらい、バスの時間まで暖をとらせていただきました。なお白川屋では「おっぱい風呂酒」も販売していますので、ぜひお土産に!

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次回は千葉県の匝瑳市で行われる『小高の裸祭り』をレポートしたいと思います。

今回の筆者:織江賢治(おりえ・けんじ)

1975年愛知県生まれ、茨城県在住。出版社勤務を経て現在フリーの編集者・ライターとして活動。雑誌やムックを中心に執筆や編集を行う。プライベートで全国の鉄道の駅とその周辺を歩く「駅鉄活動」をライフワークとし、それが高じて各地の祭りや風習、珍スポット探検なども行っている。今までに行った祭りは200以上。
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